研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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吾郷 哲朗 アブストラクト 研究報告書 | 九州大学病院 腎高血圧脳血管内科 | 脳梗塞後の修復応答により誘導される梗塞周囲再髄鞘化および機能回復の分子細胞機構についての研究 | 100 |
マウス中大脳動脈永久閉塞モデルを用いて,脳梗塞組織修復と機能回復の関連について検討した.脳梗塞後の組織修復に重要な役割を果たすペリサイトの機能が減弱したマウスとしてPDGFRβヘテロノックアウトマウス(PDGFRβ+/-)を用いた.PDGFRβ+/-では組織修復の抑制とともに梗塞周囲のアストログリオーシスが有意に減弱していた.梗塞周囲におけるOPC増殖は7日目でピークとなり野生型とPDGFRβ+/-で有意差を認めなかったが,OPC分化および再髄鞘化応答はPDGFRβ+/-で有意に抑制されていた.PDGFRβ+/-では14日目以降の運動機能回復が有意に抑制されており,再髄鞘化応答の経時変化とよく一致していた.培養細胞を用いた検討結果とも合わせ,ペリサイト由来細胞による有効な脳梗塞組織修復は,アストロサイト活性化を介したOPC分化・再髄鞘化応答を促進し機能回復に寄与するものと考えられた. | |||
猪原 匡史 アブストラクト 研究報告書 | 国立循環器病研究センター 脳血管部門 脳神経内科 | 脳梗塞の新規感受性遺伝子多型の日欧比較と当該多型が規定する脳梗塞の予後調査研究 | 100 |
日本人46,958名(脳梗塞17,752名,対照29,206名)を対象に,RNF213 p.R4810K多型頻度を調べ,日本人の脳梗塞の強力なリスク遺伝子であることを確認した.多型保有者は,女性で発症リスクがより高く(オッズ比;男性1.50 (1.14-1.98) vs. 女性2.69 (1.95-3.69)),非保有者より発症が4歳以上若いことから,一般の孤発性脳梗塞とは異なる疾患群,謂わば「RNF213関連脳血管症」の存在が示唆された.一方で,INTERSTROKE研究に登録された欧州人には本多型は観察されず,東アジア固有の脳梗塞亜型であると考えられた.これらは,脳梗塞の人種差を説明する新知見であると考えられた.RNF213 p.R4810K多型陽性群(n=20)では陰性群(n=357)に比し,中大脳動脈狭窄,前交通動脈欠損,後交通動脈両側開存例が有意に多く,ウィルス動脈輪の構築に強い影響を与えることも明らかとなった. | |||
小笠原 邦昭 アブストラクト 研究報告書 | 岩手医科大学医学部 脳神経外科学講座 | 頚動脈内膜剥離術を用いた脳循環不全性認知症とアルツハイマー病の関連の解明 | 100 |
頚部頚動脈狭窄による脳循環不全をもつ症例に対し、PET上の脳内アミロイドの沈着程度、認知機能を頚動脈内膜剥離術前後に施行し、「頚動脈狭窄による脳循環不全が脳からのアミロイドの排出を阻害し、沈着したアミロイドが脳障害をきたす」かどうかおよびその可逆性を検証した。本研究は結果として「1)慢性脳循環不全は大脳半球のアミロイド沈着を促進しない、2) 慢性脳循環不全の改善は大脳半球のアミロイドを洗い流す、3) 大脳半球のアミロイドが洗い流された場合には認知機能が改善する」ことを示唆している。 | |||
新妻 邦泰 アブストラクト 研究報告書 | 東北大学大学院医工学研究科 神経外科先端治療開発学分野 | 脳梗塞に対するMuse細胞治療の開発 | 100 |
脳梗塞は高齢化に伴い患者数は増加傾向である。既存の如何なる治療法でも脳梗塞に陥った組織を回復できないため、脳組織自体を再生させ得る幹細胞治療に期待が集まっている。本研究課題では、東北大学で発見されたMuse細胞を用いて、新しい再生医療の開発に取り組んだ。本研究結果から、ラット脳梗塞後にMuse細胞を静脈内投与することにより、免疫抑制薬の有無に関わらず、少なくとも3ヶ月の段階においては有意な神経機能の改善が得られることが示唆された。さらなる検証が必要ではあるが、今後の臨床応用を考える際に、免疫抑制を使用しない選択肢も考えられるため、多彩な患者の状況にも対応可能になると考えられた。また、脳梗塞後2日で静脈内投与したMuse細胞が、投与翌日には梗塞巣に集積していたことから、脳梗塞においてもMuse細胞が病巣に遊走して神経機能を回復していることが示唆された。今後は更に、他の中枢神経疾患への応用を目指し検証を進める。 | |||
宮脇 哲 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学医学部 脳神経外科 | 脳海綿状血管奇形の発症に関わる新規関連遺伝子の同定 | 100 |
脳海綿状血管奇形(CCM)において既知の原因遺伝子であるCCM1,2,3変異の有無およびCCM1,2,3以外の関連遺伝子の同定を目的にCCM症例を解析した。多発例5例に加え、単発例11例を対象とした。次世代シークエンサーを用いて網羅的に解析した。第一にCCM1,2,3変異を検索し、第二にCCM1,2,3変異陰性例における変異の中から疾患との関連が疑わしい新規関連遺伝子候補を抽出した。多発例の3例にいずれも過去に報告のない変異を3種類同定した。単発例にはCCM1,2,3変異は認められなかった。CCM1,2,3以外の関連遺伝子候補として、多発例においてLFNG, USP42, 単発例においてAUTS2, SOBP が抽出された。多発例、単発例におけるCCM1,2,3変異頻度及びその他の関連遺伝子候補を同定した。今後、追加症例の解析や機能解析を行うことで新たな根本的治療法開発につなげていくことが期待される。 | |||
山下 徹 アブストラクト 研究報告書 | 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経内科学 | 新しい慢性脳低灌流アルツハイマーモデルマウスを用いた新規脳血管保護療法の確立 | 100 |
本研究では、慢性脳低灌流アルツハイマー病マウスモデルに対して、フリーラジカルスカベンジャ-であるエダラボンを投与しその治療効果を検討した。 APP23マウス16週齢オス16匹は、偽手術のみとして、32匹にアメロイドコンストリクターを両側総頚動脈に取り付けることで、慢性脳低潅流モデルを作成し、16匹にエダラボン50ミリグラム/キログラム、16匹に溶媒を隔日で腹腔投与を行った。 12週齢の時点で、エダラボン治療群はロータロッドにおける運動機能と8字迷路テスト上の有意に改善を認めた。またエダラボン治療群はアミロイドβオリゴマーとリン酸化タウの沈着が有意に低下し、酸化ストレスマーカー 3-NTとAGEならびに炎症マーカーIL-1βとNLRP3の発現も有意に抑制されていた。 以上の結果から、酸化ストレス自体が慢性脳低潅流を伴ったアルツハイマー病の病態メカニズムに重要な役割を持っていることが示唆された。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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足立 健 アブストラクト 研究報告書 | 防衛医科大学校 内科学 循環器 | 心血管病におけるNO標的SERCA2の障害 | 100 |
心不全ではSERCA2の障害が関与するが機序は明らかではない。研究代表者は、心不全において、SERCA2のCys674が酸化修飾を受けて障害される事を発見した。本研究の目的は心筋障害時のSERCA2酸化修飾を評価し、臨床的意義と薬物標的を探索することである。また、Cys674の電気学的特性と不整脈発症への関与を検討した。 Cys674亜硫酸化SERCA2を検出する抗体により、拡張型心筋症患者病理検体で免疫染色を行なった。65歳以下の患者では、BNP, MACEとの相関を認めた。SERCA2酸化障害を模倣したSERCA Cys674Ser ノックインマウスにアンジオテンシンIIを一週間持続皮下注射したところ、小胞体カルシウムハンドリング異常から致死性不整脈が誘発された。SERCA2 Cys674障害の心不全予後、致死性不整脈発症への関与が示唆された。 | |||
五十嵐 正樹 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 | 腸管上皮が加齢に伴う血管病変形成に与える影響の解明とその治療への応用 | 100 |
腸管は、栄養吸収、インクレチン分泌、腸内細菌叢などを通じ、全身の代謝の制御に重要な役割を持つ臓器である。しかし、腸管上皮の加齢における変化とその加齢に伴う心血管系の変化への影響は知られていない。そこで、腸管上皮の老化を制御すると考えられる長寿遺伝子SIRT1および細胞老化に関わるp53、Rbに着目して、血管病変への影響を解明する。腸管上皮のSIRT1はNeurogenin3発現と腸管内分泌細胞数の変化を通じて、腸管ホルモンの量を制御していると考えられる。GLP-1は心血管病変との関わりが、ヒト臨床試験からも示唆されており、腸管のSIRT1がGLP-1を介して動脈硬化を制御する可能性がある。また、腸管の細胞老化もGLP-1分泌や、糖新生を通じた全身のインスリン抵抗性への関わりが示唆され、今後、これら腸管の老化を特徴づける遺伝子変化により、心血管病変を制御する可能性について検討を継続する。 | |||
市原 佐保子 アブストラクト 研究報告書 | 自治医科大学 環境予防医学講座 | 環境応答機構の破綻がもたらす炎症誘導による血管内皮機能障害の機序解明 | 100 |
循環器疾患は、喫煙、運動不足、不健康な飲食などが原因であり、個人の生活習慣の改善により予防可能な疾患の一つであると考えられているが、近年、大気汚染や土壌汚染などの原因となる環境化学物質が心血管疾患の発症を増加させているとの指摘もある。本研究では、物理化学的環境要因として環境中に飛散するナノサイズの物質の血管系への影響に注目し、動脈硬化モデル動物および血管内皮細胞に投与した結果、カーボンナノチューブの高濃度の曝露は、インフラマソームを構成する連結因子であるASCの細胞内での凝集を促進し、インフラマソームを活性化させ、動脈硬化を惹起する可能性が示唆された。血管内皮細胞障害を惹起する炎症応答に重要なインフラマソーム制御の役割の解明は、環境要因による毒性評価に役立つのみならず、生活習慣による循環器疾患の病態解明や発症予防法の確立に寄与すると考えられる。 | |||
伊藤 薫 アブストラクト 研究報告書 | 理化学研究所 生命医科学研究センター 循環器疾患研究チーム | アントラサイクリン心筋症病態解明と日本人精密化医療実現のための包括的ゲノム解析 | 100 |
近年がんの寛解治癒率は格段に向上しているが、それに伴い抗がん剤副作用が予後やQOLを左右する主要因となっている。その中で最も重要な課題がアントラサイクリン系抗がん剤による心筋症であり、遺伝要因の理解は未だ十分でなく日本人固有の遺伝リスクも不明である。そこでゲノム研究の手法を用い、その分子メカニズム理解と新規治療標的の創出、患者層別化と最適な治療提案など、精密医療実現に資する研究を行う。日本人のスタディの予備実験とサンプル収集は順調に進んでいる。また欧米人からの解析結果から、心筋症関連遺伝子群のうちタイチン遺伝子のタンパク質短縮遺伝子変異が、アントラサイクリン心筋症の背景に存在し、発症リスクを増加させているものと考えられた。この結果から、積算量や臨床像だけでなく、遺伝子検査もアントラサイクリン心筋症発症の予測に重要であると考えられた。 | |||
沖 健司 アブストラクト 研究報告書 | 広島大学大学院医歯薬保健学研究科 分子内科学 | シングルセル解析を基盤にした細胞間情報伝達を介したアルドステロン合成機構の解明 | 100 |
原発性アルドステロン症は,アルドステロン産生腺腫 (APA) と特発性アルドステロン症に大別され,APAの30-60%に内向き整流性カリウムチャネル (Kir3.4) をコードするKCNJ5の体細胞変異が同定される.KCNJ5変異によるアルドステロン合成機構を明確にするために,シングルセル解析を用いて,個々の細胞レベルにおけるKCNJ5変異とCYP11B2発現量を明らかにし,アルドステロン合成の細胞内分子機構を解明することを最終目的とし,本研究において,適切なシングルセルを得るための条件検討を行うことを目的とした.手術で摘出したAPAを単一細胞に破砕し,フローサイトメトリーにより,細胞径が小さいもの,DAPIが適切に発現しているものを取り出すことにより,1000個以上の生細胞のみを回収することができた.抽出した細胞に,アルドステロン合成酵素CYP11B2が高発現しており,APA由来の細胞であることを確認した. | |||
尾野 亘 アブストラクト 研究報告書 | 京都大学大学院医学研究科 循環器内科学 | ATP保持による心筋梗塞治療法の開発 | 100 |
ブタ心筋梗塞(虚血再灌流モデル)を用いてKUS121の保護効果を検討した。再灌流直後にKUS121を冠動脈内投与し、再灌流7日目に梗塞領域の評価を行った。TTC・エバンスブルー二重線色による組織学的な評価では、KUS121投与によって用量依存的に梗塞領域は減少した。また、遅延造影心臓MRIによる梗塞領域の評価においても同様の結果を示した。 心筋梗塞後の梗塞範囲の大きさは予後との相関があることが明らかにされている。心筋梗塞後の梗塞範囲を抑えることができれば、患者のQOLの大幅な改善にとどまらず、総死亡率ならびに心不全入院を減少させることが期待できる。 今後、新規の急性心筋梗塞治療薬として臨床応用へ向けた開発を行う予定である。心不全による再入院と治療においては現在莫大な医療費が使われているため、そのような心筋梗塞治療薬の開発は医療経済的にも大きな意義を持つと考えられる。 | |||
門田 真 アブストラクト 研究報告書 | 信州大学バイオメディカル研究所 バイオテクノロジー・生体医工学部門 | 多能性幹細胞由来心臓ペースメーカーの開発 | 100 |
徐脈性不整脈の治療法である機械式ペースメーカー植込み術は、機械性能の向上とともに症例数が増加している。しかし、機械式ペースメーカーは、定期的な電池交換術が必要であり高額な医療費の問題に加え、手術後感染の増加が大きな問題となっている。本研究の目的は、多能性幹細胞由来心筋細胞からペースメーカー細胞を純化し、細胞治療による生物学的ペースメーカーを開発することである。ヒトES細胞株H9のペースメーカー細胞特異的遺伝子の下流に蛍光タンパク遺伝子DsRedをCRISPR/Cas9を用いて遺伝子導入し、レポーター遺伝子導入細胞株を作製に成功し、分化誘導を行ったが、DsRedの蛍光発現が弱く、移植に必要な細胞数が確保できなかった。今回作製した細胞株ではペースメーカー細胞の純化に至らなかったが、標識遺伝子を変更してレポーター細胞株の樹立に成功すれば、新たな細胞治療への応用が可能になると考えられる。 | |||
北川 知郎 アブストラクト 研究報告書 | 広島大学大学院医歯薬保健学研究科 循環器内科学 | 心外膜下脂肪の炎症基質に着目した冠動脈粥腫および弁膜石灰化への分子的アプローチ | 100 |
本研究では、画像ツールを用いた冠動脈粥腫および心臓弁膜石灰化の臨床的病態評価と、術中に採取した心外膜下脂肪組織(epicardial adipose tissue: EAT)の分子生物学的解析を対比することにより、EATの病原性の本質に迫った。また、新規バイオトレーサーを用いた次世代分子イメージングを活用し、EATの炎症基質に着目した新たな予防的治療戦略を模索した。その結果、以下の知見を得た。①CT上の冠動脈ハイリスクプラークを有する群においてはEATの炎症サイトカインIL-1β発現が亢進している。②フッ化ナトリウム(NaF)PETを用いた検討では、大動脈弁石灰化におけるNaF信号が冠動脈ハイリスクプラークや経時的な石灰化進展と相関する。③プラーク周囲EATのCT値とプラークNaF 信号は正の相関を呈し、冠動脈狭窄やハイリスクプラークで補正した後もプラーク周囲EATのCT値上昇がプラークNaF 信号亢進の有意な予測因子である。 | |||
佐藤 公雄 アブストラクト 研究報告書 | 東北大学病院 循環器内科 臨床医学開発室 | これまでの基礎研究を基盤とした臨床応用研究 | 100 |
研究代表者はこれまで、酸化ストレス刺激によって血管平滑筋細胞や活性化マクロファージ、活性化血小板、心線維芽細胞から分泌されるサイクロフィリンA (CyPA)およびその受容体basigin (Bsg)の心血管疾患発症の機序の解明を行ってきた。本研究の目的は、循環器疾患発症における酸化ストレス分泌蛋白サイクロフィリンA(CyPA)およびその受容体Basigin (Bsg)の基礎研究成果を臨床応用すべく診断薬や治療薬開発を行うことにある。CyPAとその受容体Bsgは循環器疾患のみならず癌の発症に重要な役割を果たしており、予後を規定する。そこで、CyPAとBsgの双方の発現を抑制し、細胞増殖抑制作用を指標としたハイスループット・スクリーニングを進め、セラストロールを発見した。また、セラストロールの投与により心不全に伴う肺高血圧動物モデルでの心機能および肺高血圧症の改善効果を確認し、論文報告を行った(Proc Natl Acad Sci U S A. 115:E7129-E7138, 2018.)。 | |||
束田 裕一 アブストラクト 研究報告書 | 九州大学稲盛フロンティア研究センター 先端生命情報研究部門 | エピゲノムによるコレステロール調節機構 | 100 |
生活習慣病は、食生活などの環境と加齢に密接な関係があり、環境と遺伝子発現の橋渡しをするエピゲノムがその発症に関与している。本研究では、エピゲノム制御因子KDM7の欠損により引き起こされる脂質異常をモデルとして、脂質異常症の発症機構におけるエピジェネティック制御の役割を解明し、その成果を脂質異常症の予防および治療法へと発展させることで国民の健康増進に貢献することを目的としている。本研究の結果、KDM7はマウスの雌雄を問わず視床下部、下垂体前葉におけるGnrh、Fshbの遺伝子発現を制御し、性ホルモンの調節に関与していることが示唆された。そして、KDM7欠損により雌マウスではエストロゲン合成が減少し、血中HDLコレステロールの減少を引き起こしている可能性が示唆された。本研究の継続は、脂質異常症の発症機構におけるエピジェネティック制御の役割解明へと繋がることが期待できる。 | |||
馬場 志郎 アブストラクト 研究報告書 | 京都大学医学部附属病院 小児科 | HOIL-1L遺伝子異常による心不全発症および進行の病態解明 | 100 |
HOIL-1L遺伝子異常症は高率に重症筋症・心筋症となる。細胞内に異常多糖類(アミロペクチン)の蓄積が認められ筋症・心筋症発症・進行の原因といわれているが機序は全く不明である。 まず、骨格筋芽細胞株であるC2C12を用いた実験では、正常C2C12とHOIL-1L遺伝子ノックアウトC2C12(C2C12-KO)から分化した骨格筋細胞の比較では、いずれも有意なアミロペクチン沈着は認められなかった。一方、C2C12-KO骨格筋細胞でより未分化な骨格筋が作製されていた。HOIL1L遺伝子異常患者から作製したiPS細胞(HOIL-iPS)由来心筋細胞においても同様な結果であり、HOIL-iPS由来心筋細胞は、より未熟であることが示唆された。 以上より、HOIL-1L遺伝子は骨格筋・心筋分化に影響し、筋症・心筋症を発症すると考えられた。 | |||
原田 睦生 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学大学院医学系研究科 先端臨床医学開発講座 | 心不全進展過程におけるβ-アレスチン偏向性受容体CXCR7の機能解明 | 100 |
CXCR7はマウス心臓で最も発現の多いGPCR遺伝子でありながら、その役割は不明である。このため本研究ではCXCR7の心臓における生理的、病理的役割を解明するために研究を実施した。 心筋細胞特異的CXCR7遺伝子欠損マウスに圧負荷 心不全を誘導すると、野生型マウスと比較して心機能の増悪傾向を認めた。一方で、血管内皮特異的、線維芽細胞特異的Cxcr7遺伝子欠損マウスの圧 負荷心不全モデルでは、野生型マウスと比較して明らかな差異を認めなかった。左冠動脈を結紮した心筋梗塞モデルを作成すると、心筋細胞特異的CXCR7遺伝子欠損マウスで有意な心機能の抑制を認めた。このため、心臓におけるCxcr7は心筋細胞に発現するものが主体となっており、 心保護的に働いている可能性が示唆された。 | |||
福田 大受 アブストラクト 研究報告書 | 徳島大学大学院医歯薬学研究部 心臓血管病態医学分野 | 血管内皮細胞における自然免疫機構が糖尿病性血管機能障害の発症に与える影響の検討 | 100 |
【背景】 細胞内核酸断片認識受容体のstimulator of IFN gene (STING)の糖尿病性血管内皮機能障害への関与を検討する。 【方法と結果】 糖尿病による内皮依存性血管弛緩反応は、野生型マウスで悪化したが、STING欠損マウスでは差がなかった。両系統に血糖値に差はなかった。また、STINGアゴニストのcGAMPによって、野生型マウスでは内皮依存性血管弛緩反応が悪化したが、STING KOマウスでは差がなかった。さらにcGAMPにより血管内皮細胞のVCMA-1などの炎症性物質の発現が増加した。また、cGAMPにより、TBK-1とIRF-3のリン酸化が増加した。さらに、TBK-1の阻害薬の存在下で、上述の炎症性物質の発現が抑制された。 【結語】 STINGが、高血糖下で遊離した核酸断片を認識し、血管内皮細胞の慢性炎症を惹起することで糖尿病性血管内皮機能障害を発症させる。 | |||
古橋 眞人 アブストラクト 研究報告書 | 札幌医科大学 循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座 | 心血管・代謝疾患における脂質シャペロンの役割解明 | 100 |
脂質シャペロンの一つである脂肪酸結合タンパク4 (FABP4) は脂肪細胞とマクロファージに発現し、糖尿病および動脈硬化の形成に関連する。近年、FABP4が脂肪細胞から分泌され、新規のアディポカインとして働くことが報告されている。通常動脈の血管内皮細胞にはFABP4は発現しないが、細胞老化や血管傷害などにより血管内皮細胞にFABP4が異所性に誘導されることが報告された。今回、その意義について検討した。血管傷害により再生された血管内皮細胞において、異所性にFABP4が発現し、局所で分泌され、近傍の細胞にオートクライン、パラクラインで作用することで、炎症を惹起し、血管内皮機能の低下や血管平滑筋(様)細胞での増殖能や遊走能を増加させ、新生内膜形成に関与することが示された。臨床的には血管形成術後の再狭窄に血管内皮での異所性FABP4発現が病態に関与することが示唆され、新規の治療ターゲットになる可能性が期待される。 | |||
南野 徹 アブストラクト 研究報告書 | 新潟大学大学院医歯学総合研究科 循環器内科学 | 動脈硬化疾患に対する抗老化治療の開発 | 100 |
これまで我々は、p53依存性の老化シグナルの活性化が、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病の発症進展に関与することを報告してきた。しかしながら、p53を直接抑制することは、がん化に繋がるため臨床応用は困難である。さらに最近我々は、p53の下流で制御されるセマフォリンが糖尿病の病態に重要であることを見出した。そこで今回我々はペプチド抗原を用いた抗セマフォリン3Eワクチンを開発し、Sema3E-plexin D1経路を抑制することでがん化を促進することなく、糖代謝異常を改善する、新たな糖尿病治療の創出を目的として研究を開始した。食餌誘導性肥満モデルマウスに、アジュバントとともにSema3Eペプチド抗原を接種したところ、Sema3Eに対する抗体価の有意な上昇を認めた。ワクチン投与を行った肥満モデルマウスにおいて糖負荷試験を行ったところ、ワクチン群においてブドウ糖負荷後の血糖値の上昇が有意に抑制されたことからその有効性が示された。 | |||
八代 健太 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学大学院医学系研究科 心臓再生医療学共同研究講座 | 心筋緻密化の背景にある受容体GFRA2を介する新規シグナル経路の解明 | 100 |
心筋緻密化は、心室壁の密度と厚みが増す心室壁の成熟過程である 。この過程に関連するシグナル経路の情報は断片的で、いまだに不明な点が多い。私たちは、マウスにおいて、神経栄養因子受容体GFRA2が、未知のシグナル経路によって心筋緻密化に必要である事を見出した。これを起点にして、この新規シグナル経路の本態を明らかにすることで、心筋緻密化の分子機構の理解を深めることを目的とし、心筋緻密化過程での遺伝子発現解析と、心筋緻密化過程を模倣するオルガノイドの樹立に挑む研究計画を開始した。現在、ヒトES細胞を用いる計画は準備段階にある一方で、マウスを用いて転写因子Sox17が心筋緻密化に関与することを見出した。また、オルガノイド樹立のために、マウスES細胞から心内膜様の内皮細胞を得て、さらにこれが心内膜と言えるかどうかを現在は検証中である。今後も引き続き研究計画を継続し、臨床的な応用への発展に挑みたい。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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中村 晋之 アブストラクト 研究報告書 | 九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 | 脳血管障害後の組織修復に細胞外マトリックスperlecanが与える影響に関する研究 | 100 |
我々は細胞外マトリックス蛋白perlecanが脳血管において内皮細胞・ペリサイト間の基底膜に存在することに着目し、脳虚血病態における両細胞間の密な相互作用すなわち血液脳関門(BBB)の維持に関与しているのではないかと考え、Perlecan KOマウスに対して脳梗塞モデルを用いて検討した。Perlecan KOマウスでは梗塞巣の拡大・BBB破綻の増悪がみられた。脳虚血によって梗塞巣および周囲にはペリサイトが動員されるが、Perlecan KOマウスではそれが抑制されていた。Recombinant perlecan domain V (DV)を作成して機序を検討したところ、perlecan DVがPDGFRβおよびintegrin α5β1の協調作用によって脳血管ペリサイトの遊走を促進した。脳梗塞後にperlecan DVを投与すると、梗塞巣周辺でのペリサイト増加をさらに促し、梗塞サイズが縮小する傾向がみられた。脳梗塞修復を促進させる治療にむけて、今後更なる検討が必要である。 | |||
福田 達也 アブストラクト 研究報告書 | 徳島大学大学院医歯薬学研究部 薬学域 衛生薬学分野 | 脳への微弱電流処理によるBBB開口・リポソーム動態制御による脳梗塞治療法の開発 | 100 |
脳梗塞時の特徴的な病態である血液脳関門(BBB)の透過性亢進に着目し、リポソーム製剤を用いた脳梗塞治療の有用性を報告してきた。しかし、リポソームの患部への移行は虚血/再灌流後の早期に限定されるため、この時間的制限を克服し、BBBを突破可能な技術が求められる。我々は、イオントフォレシスに用いられる微弱電流処理が組織細胞間隙の開裂を誘起し、リポソーム等のナノ粒子の組織内浸透を促進するという知見に基づき、脳への微弱電流処理によってBBBを構成する細胞の生理を制御し、BBBの開口を誘起することで脳梗塞部位へのリポソーム製剤の集積性を増大することを目的とした。発育鶏卵を用いた検討から、微弱電流処理が低分子・高分子物質の血管外への漏出を促進、すなわち血管透過性の亢進を誘起することが示唆された。一方、脳梗塞モデルラットを用いた検討では期待した結果を得ることが困難であったため、条件を最適化する必要がある。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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魚崎 英毅 アブストラクト 研究報告書 | 自治医科大学 分子病態治療研究センター 再生医学研究部 | 足場の硬化による心筋細胞の機能低下メカニズムの解明 | 100 |
多能性幹細胞から誘導した心筋細胞(PSC-CMs)は長期培養を行っても十分に成熟しない。そこで、成熟度の指標となるレポーター細胞を開発し、細胞外マトリックス(ECM)のスクリーニングを行い、PSC-CMsの成熟を促進するECMを同定した。 成熟度レポーターはMyom2遺伝子座にRFPをノックインし樹立した。Myom2-RFPはES細胞から心筋細胞へと分化誘導すると、分化28日目で70%が陽性となる。Myom2-RFP陽性細胞は形態、サルコメア構造、二核化、生理学機能などで、RFP陰性細胞より成熟した性質を持つ。15種類のECMから、Myom2-RFPの蛍光輝度を増加させるLN511,521を同定した。LN511, 521上でPSC-CMsを培養すると、PSC-CMsはより成熟した。 本研究を進めることで、より成熟したPSC-CMsが得られ、創薬や疾患研究への応用が可能になると考えられる。 | |||
神吉 康晴 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学 アイソトープ総合センター RI教育研究推進部門 | ヘテロクロマチン及び染色体構造による血管老化機構の解明 | 100 |
本研究は、動脈硬化の初期イベントである血管内皮細胞への単球接着に関与するエピゲノム因子を探索する目的で研究を開始した。単球接着には、血管内皮細胞上に発現する接着因子VCAM1, ICAM1, E-selectinなどが重要である。これらの発現変動を調べていくと、炎症性サイトカインを受容した血管内皮細胞では、KDM7A、UTXという2つのヒストン脱メチル化酵素が、ヘテロクロマチン状態を速やかに除去することが重要であることが示された。更に、上記2つの酵素の阻害剤をマウスに投与すると、単球接着が有意に抑制された。これらの結果から、血中の脂質の高い患者において、KDM7AやUTXの阻害剤は、動脈硬化初期イベントである単球接着を阻害する可能性が示唆された。 | |||
櫛笥 博子 アブストラクト 研究報告書 | 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 生体情報薬理学分野 | タイプ別心筋のダイレクトリプログラミングにおける研究 | 100 |
胚発生、幹細胞からの心筋誘導研究は、線維芽細胞から心筋への分化転換方法の樹立に大きく貢献した。しかしながら、機能性の異なる心筋タイプへの分化転換法は確立されていない。 本研究では、タイプ別心筋への分化転換の制御機構を明らかにし、線維芽細胞の性質の理解を目的とした。まず、マウス胚発生過程心臓とヒトiPS細胞由来分化過程心筋からタイプ別心筋の誘導に必要と予測される遺伝子プロファイルを作成した。次に、強制発現系を用いてタイプ別心筋の誘導法を確立した。また同因子は、線維芽細胞を用いた心筋分化転換実験においても、タイプ別心筋に分化転換させる機能を有した。興味深いことに、線維芽細胞においてレチノイン酸シグナルは恒常的に活性化されており、心房筋へ分化転換しやすいことを見出した。この発見は線維芽細胞由来心筋を用いた再生医療研究の発展と、レチノイン酸シグナルの組織特異的な転写制御機構の理解に寄与する。 | |||
篠原 啓介 アブストラクト 研究報告書 | 九州大学病院 循環器内科 | 心肥大における心-脳連関による交感神経出力増加の機序解明 | 100 |
【目的】心臓求心性交感神経末端のTRPV1刺激の増強を介した延髄孤束核でのBDNF増加が、心肥大における交感神経活性化の機序に関与するかを明らかにする。【方法と結果】C57BL/6Jマウスにおいて腹部大動脈狭窄術により左室重量が増加し、心臓TRPV1および孤束核BDNFの発現が増加した。心臓TRPV1の刺激により交感神経出力増加を介した昇圧反応が起こることから、TRPV1のリガンドであるカプサイシンを心表面に貼付し血圧の変化を測定したところ、大動脈狭窄術群でsham群と比しカプサイシンによる昇圧反応は増強した。腹部大動脈狭窄術により誘導されたこれらの変化は、TRPV1ノックアウトマウスにおいてすべて抑制された。【考察】圧負荷心肥大における交感神経出力の増加や心肥大には、心臓TRPV1を介した心臓求心性交感神経活性化および弧束核BDNF増加が関与することが示された。 | |||
遠山 周吾 アブストラクト 研究報告書 | 慶應義塾大学医学部 循環器内科(臓器再生医学) | 代謝制御と力学刺激による成熟化ヒト心筋組織の作製と創薬への応用 | 100 |
ヒトiPS細胞はあらゆる細胞に分化可能であり、再生医療や創薬スクリーニングへの応用が期待されている。しかし、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞は様々な成熟段階の細胞から構成される不均一な集団であるため、創薬スクリーニングにおける表現型のばらつきが問題となっている。本研究では、成熟化を促進させる手法として培養環境および3次元心筋組織における力学刺激に着目した。まず、ヒトiPS細胞から高純度心室筋細胞を作製し、それらを用いて、Engineered Heart Tissue (EHT) を作製した。EHTでは配向性が認め、成熟化マーカーが顕著に上昇していることを確認した。さらにEHTに対してISPを添加したところ、陽性変時作用、陽性変力作用が認められた。今後は成熟度を促進させる添加因子や培養条件を探索し、未熟心筋組織と成熟心筋組織における薬剤応答性の差異を明らかにしたい。 | |||
中原 健裕 アブストラクト 研究報告書 | 慶應義塾大学医学部 放射線科学教室(診断) | 大動脈瘤進展・破裂予測におけるNaF/FDG PETの有用性の検討~新規治療法・新規薬剤開発の礎 | 100 |
大動脈瘤は慢性的な炎症性疾患であり、死亡率も高い。無症状に進展・破裂し、その予測はできない。我々は、同じく炎症を背景とする動脈硬化症において、18F-NaF/FDGを用いた分子イメージング(PET)が有益であることを示してきた。本研究の目的は、同一個体の同一病変における18F-NaF/FDGの取り込み及び大動脈瘤の経時的変化を生体内で観測し、大動脈瘤進展・破裂予測におけるNaF/FDG PETの有用性を評価する事である。ラット大動脈瘤モデルにおいて、FDG・NaFの取り込みは経時的に変化した。主にマクロファージ活性を反映するFDG取り込みは比較的早期に対照群と同レベルまで低下したのに対し、微小石灰化を反映するNaFの取り込みは遷延し、対照群よりも高いレベルを維持した。以上より大動脈瘤進展予測におけるFDG/NaF PETの有用性を示唆し、臨床的応用時の解釈の補助となると考えられる。 | |||
原 弘典 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学医学部附属病院 循環器内科 | Hippo-YAP経路を標的とした新規心筋再生治療の開発 | 100 |
従来、成体心筋細胞は増殖しないと考えられてきたが、近年、成体心筋細胞も、主に既存の心筋細胞が分裂することで、僅かながら自己再生しており、その機序として「既存の心筋細胞の分裂」が注目されている。成体心筋細胞の増殖メカニズムを解明し増幅することができれば、従来の虚血性心疾患・心不全治療の効果を補足・促進する新たな治療手段の提供に繋がる可能性がある。本研究では増殖を司るHippo経路の転写因子TEADsの転写活性を指標に、心筋細胞増殖と心筋再生を促進する薬剤の創出を試みた。約18,600種類の機能未知化合物ライブラリーから有効な化合物を選択、さらに改変することで、マウス心筋梗塞モデルにおいて心臓線維化の軽減と心機能改善に有効な化合物を創出した。この化合物はヒトiPS細胞由来心筋細胞でも増殖効果を認めた。今後、虚血性心疾患・重症心不全患者への新たな治療の開発、さらには心筋細胞の分裂機序解明が期待される。 | |||
吉田 陽子 アブストラクト 研究報告書 | 新潟大学大学院医歯学総合研究科 循環器内科学/先進老化制御学講座 | ミトコンドリアダイナミクスを標的とした新たな心不全治療の開発 | 100 |
重症心不全患者には集学的治療が有効なレスポンダー群と、抵抗性を示すノンレスポンダー群が存在し、ノンレスポンダー群の予後は特に悪く医学管理上問題となる。ノンレスポンダー群の詳細な分子機序や、両者を鑑別する確立したマーカーは存在せず、未だ満たされない医療ニーズが多く存在する。我々はヒト心不全患者の心筋組織を用いた検討において、従来の集学的心不全治療が有効なレスポンダー群と比べ、治療に不応性のノンレスポンダー群でヒト心臓サンプルを用いて検討した結果、ノンレスポンダー群で、心筋細胞のミトコンドリア数やサイズが減少していること、また心筋細胞のMitofusin-1の発現が減少することがわかった。その分子機序として、過剰な交感神経からcAMP-PKAシグナル経路を介してMfn1の発現が制御されているものと考えられた。本研究により、心臓のMitofusin-1を標的とした心不全治療も創出できる可能性があると考えられた。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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楠本 大 アブストラクト 研究報告書 | 慶應義塾大学医学部 循環器内科/救急科 | 抗動脈硬化iPS由来血管内皮細胞にて高発現している霊長類特異的遺伝子POTEEが、動脈硬化抑制に果たす役割の検討 | 100 |
我々は、動脈硬化リスクが非常に大きいにもかかわらず動脈硬化進行が全く認められない抗動脈硬化患者から作成したiPS細胞由来血管内皮細胞では、霊長類特異的遺伝子POTEEが高発現していることを突き止め、詳細な解析を行なった。POTEEを培養血管内皮細胞に強制発現させると、酸化ストレスに誘導される細胞老化や炎症を抑制し、炎症惹起転写因子であるNFκBの活性化を抑制した。またPOTEEの結合蛋白を質量分析法により網羅的に解析を行い、低分子G蛋白であるRAN関連タンパクと強く相互作用していることが分かった。POTEEはRNAシグナルの活性化を促進する事でNFκBの作用を減弱することが判明した。血管内皮細胞特異的にPOTEEを強制発現させるマウスを作成したところ、大腿動脈カフモデルに誘導される血管障害を著明に抑制した。またAPOE-/- マウスと交配させ高脂肪食を投与して動脈硬化を誘導すると、POTEEは動脈硬化進行を著明に抑制することが示された。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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(留学先) | |||
後藤 信一 | 慶應義塾大学医学部 内科学教室 循環器内科 | 急性冠症候群予防の個別最適化:ディープラーニングによる人工知能を用いて | 500 |
Harvard University, Brigham and Women’s Hospital, U.S.A. | |||
三木 健嗣 | 京都大学iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門 | 脱細胞化マトリックスを用いたヒト三次元心筋組織の創出 | 500 |
Center for Regenerative Medicine Harvard Stem Cell Institute, U.S.A. |