研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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池添 隆之 アブストラクト 研究報告書 | 福島県立医科大学 血液内科学講座 | TM類縁体を用いた新規血管内皮保護薬の開発 | 100 |
トロンボモジュリン(TM)は主に血管内皮細胞上に発現して血液凝固を負に制御する膜タンパクである。TMの細胞外領域を、遺伝子工学技術を用いて作製したrTMは播種性血管内凝固(DIC)の治療薬として2008年から臨床使用されている。造血細胞移植後に内皮細胞障害を起点として発症する肝類洞閉塞症候群(SOS)や血栓性微小血管症(TMA)を基礎疾患として発症したDICをrTMで治療するとSOSやTMAにも著効を示したことから、我々はrTMに血管内皮保護作用が存在することに気付いた。rTMは抗凝固薬であるため出血のリスクの高いSOSやTMAには使用しづらい。そこで血管内皮保護作用に特化したTM類縁体を作製すること思い立った。本研究で、血液凝固系に全く作用せず内皮保護作用のみを保持するTMの19アミノ酸構造を同定することに成功した。このアミノ酸構造はマウスSOSモデルでその予防効果を示した。 | |||
柏木 浩和 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学 | 血小板インテグリンシグナル機構の解明と血管病変形成に関する検討 | 100 |
血管性病変の形成に重要な役割を果たしている血小板インテグリン機能に関し、以下のような検討を行った。1)インテグリン活性化を誘導するインサイドアウト・シグナルにおけるkindlin-3の重要性を、αIIbβ3欠損血小板およびkindlin-3欠損血小板を用いて検討した。その結果、kindlin-3は血小板においてαIIbβ3だけでなくコラーゲンの受容体であるα2β1の機能発現にも重要であることが明らかとなった。2)αIIbβ3恒常的活性化変異導入マウスを用いた検討により、本変異が血小板機能だけでなく血小板産生にも影響を与えることを明らかにした。これらの一連の研究は今後の抗血小板療法開発における分子標的検討の重要性とともに、インテグリン機能制御により、血小板機能だけでなく血小板数もコントロールしうる可能性を示唆している。 | |||
吉岡 和晃 アブストラクト 研究報告書 | 金沢大学医薬保健研究域医学系 血管分子生理学分野 | エンドソーム膜受容体シグナリングを標的とする難治血管病治療戦略の開発 | 100 |
本研究では、治療困難な血管難病(虚血肢血管新生、大動脈瘤、アナフィラキシー)を対象とする新規治療の開発を目的として、リン酸化PI産生酵素・クラスII型PI3キナーゼ“PI3K-C2α”の発現安定化を標的としたmiRNA核酸医薬および、PI3K-C2αの酵素産物・PI(3)Pに対する脱リン酸化酵素(PIホスファターゼ)を探索・機能解析を行い、エンドサイトーシスにおけるPI3K-C2αの機能調節機構の解明を目的とした。本研究課題として取り組んだin vitro実験系においては、内皮細胞内膜小胞上で脂質リン酸化酵素・PI3K-C2αにより産生されるPI(3)Pを特異的に分解する脱リン酸化酵素・MTMR4を同定し、C2α-MTMR4系による強調的PI(3)Pレベル調節システムの存在を見出した。今後、このPI(3)Pレベル調節システムを標的とした全く新しい概念の血管内皮機能改善薬の開発に向けた開発プラットホーム作りに着手する道筋ができたことは、本研究課題の成果である。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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金澤 寛之 アブストラクト 研究報告書 | 旭川医科大学 移植医工学治療開発講座 | ヒト由来人工赤血球を用いたブタ脂肪肝の保存方法の検討 | 100 |
【背景】マージナルドナー肝に対し機械還流保存を適応することでドナープール拡大が期待されている。 【目的】マージナルドナー肝に対する酸素化機械還流保存の至適灌流条件の探索と、人工赤血球含有灌流保存液に期待される役割について精査する。 【方法】機械還流保存灌流温度、灌流圧、酸素供給条件、および人工赤血球含有保存液での検討を行う。 【結果】心停止ドナー肝の酸素化機械還流保存は組織ATP濃度が減少することなく、むしろ経時的に増加し阻血再灌流傷害を軽減した。特殊飼料による脂肪肝モデル作成を試み、肝障害を誘導することができた。 【考察】酸素化灌流保存法は虚血再灌流傷害を軽減し、組織ATP濃度を上昇することが示されたが、人工赤血球を用いることで効果的な酸素化が担保されれば、一層の臓器機能回復および蘇生が期待される。大動物での安定した脂肪肝モデルの確立が急務であり、引き続き検証を行っていく必要がある。 | |||
河野 洋平 アブストラクト 研究報告書 | 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
免疫アレルギー学分野 | cCLPの増殖維持に関わる支持細胞由来因子の同定 | 100 |
免疫細胞が感染防御のみならずがん抑制に重要であることからも、ますます免疫研究が活発となっていくことが期待されるが、免疫細胞の資源は十分でない。申請者は最近新たな免疫細胞資源として、cCLPと名付けたあらゆる免疫細胞に成長できる希少なマウス免疫前駆細胞の長期大量培養に成功した。cCLPの増殖および未分化性維持には支持細胞が必須であるが、その分子詳細は不明であり、本研究では当該因子の同定を目的とした。CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて、CXCL12が関与しうることを明らかにした。またcCLP増殖支持能の異なる支持細胞のRNA-seqを行い、網羅的遺伝子発現比較解析を行ったところ、CXCL12以外の候補分子としてDlk1を抽出した。今後当該分子の欠損株作製など、さらに着目してより深い研究を行うことで、CLP増殖への関与を明らかにしていく必要がある。 | |||
諫田 淳也 アブストラクト 研究報告書 | 京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学 | 同種造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病における早期発見及び治療反応性予測を目的としたmicroRNAの評価 | 100 |
GVHDに対する非侵襲的かつ鋭敏なバイオマーカーの検索および早期治療介入は移植成績の向上に貢献すると考えられる。まず、1990年から2018年の間に京都大学医学部附属病院で初回の同種移植を受けた575名の患者を対象として、患者背景や移植方法が、急性GVHD発症に及ぼす影響を検討した。急性GVHD発症リスク因子として、カルシニューリン阻害剤のみ、抗胸腺細胞免疫グロブリン不使用、およびHLA不適合の存在が抽出された。 次に、同種造血幹細胞移植前から1 ヶ月後まで、1週間毎に血清の凍結保存を行った。この中から、移植前、移植後1週、2週、3週、4週の血清が連続的に凍結保存され、かつこの期間、再発を認めていない患者109例を抽出した。移植後1-2週の血清からは回収不良であったが、移植後3-4週の血清からは十分量のmicroRNAが回収できた。現在、回収したmicroRNAの一部を用いて、網羅的解析を行っている。 | |||
牧島 秀樹 アブストラクト 研究報告書 | 京都大学大学院医学研究科 腫瘍生物学 | 急性骨髄性白血病の移植後再発における新規GNB2遺伝子異常の解明 | 100 |
急性骨髄性白血病(AML)に対する治療は、時に短期的に有効ではあるが、AMLが抵抗性を獲得し再発することも多く、その場合高頻度に早期死亡に至る。従来、そのメカニズムとして、ゲノム異常に関しては、特に、ボトルネック効果に関連したクローン構造の変化について、十分検討されていないため、再発・治療抵抗性に関わる遺伝子異常が明らかにされていない。本研究の目標は、再発・治療抵抗性を示すAMLに対して、有効な標的治療を開発することである。そこで、我々が培ってきたゲノム解析技術とボトルネック効果に関する成果を活用し、再発・治療抵抗性獲得前後の多様性を明らかにするために再発期間が短縮される前後で獲得される遺伝子異常を明らかにした。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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浅田 礼光 アブストラクト 研究報告書 | 国立成育医療研究センター 分子内分泌研究部 | 新生児の腎臓におけるエリスロポエチン産生細胞成熟および血管新生制御機構の解明 | 100 |
日本では出生数の約1割が早産児である。早産低出生体重は様々な合併症を引き起こすが、その病態には不明な点が多い。本研究では副腎皮質ホルモンが腎エリスロポエチン産生細胞および腎臓の血管新生に与える影響を調べた。生後早期の未熟児貧血マウスに副腎皮質ホルモンを投与するとエリスロポエチン産生細胞の未熟性マーカーalpha-smooth muscle actinの発現が低下し、エリスロポエチン産生増加と貧血改善が認められた。一方、副腎皮質ホルモン投与群ではCD31陽性血管密度の低下が観察された。遺伝子発現解析を実施したところ、副腎皮質ホルモン投与群における血管内皮増殖因子受容体II型の発現低下が認められ、同薬剤はこの受容体発現減少を介して血管新生を引き起こしていると考えられた。 | |||
荒木 真理人 アブストラクト 研究報告書 | 順天堂大学大学院医学研究科 輸血・幹細胞制御学 | 変異型分子シャペロンの多量体化によるサイトカイン受容体活性化メカニズムの解明 | 100 |
フィラデルフィア染色体陰性の骨髄増殖性腫瘍(MPN)患者において見いだされる、calreticulin遺伝子のフレームシフト変異による細胞腫瘍化メカニズムの解明を行った。本研究により、腫瘍化に必要な変異型CALR蛋白質の多量体化が、変異により出現した変異型特異的ドメインに存在する疎水性アミノ酸クラスター間の分子間相互作用により生じることが明らかになった。さらに、多量体化した変異型CALR蛋白質が、細胞表面においてトロンボポエチン受容体MPLを恒常的に活性化することで、腫瘍化シグナルを発生させていることを明らかにした。今後、本研究で得られた知見を基盤として、変異型CALR蛋白質による細胞腫瘍化シグナルを特異的に抑制するMPNの新規治療戦略の開発が大いに期待される。 | |||
杉村 竜一 アブストラクト 研究報告書 | 京都大学 CiRA 斎藤潤研究室 | 転写・シグナリングネットワークによる造血幹細胞の誘導 | 100 |
ヒトiPS細胞をiMatrix511上で2次元培養し維持した。次にヒトiPS細胞を3次元スフェロイド形成し、iMatrix511上に展開した。次にサイトカインを添加することで中胚葉オーガノイドを誘導し、血球分化を行った。得られたHemogenic内皮細胞をfibronectin上に展開する血球への分化をうながした。ヒトiPS細胞から得られたHemogenic内皮細胞の血球分化を従来法と比較したところ、効率の良い結果を得たので論文出版したhttps://www.jove.com/video/59823/hemogenic-endothelium-differentiation-from-human-pluripotent-stem特許出願中である。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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渥美 達也 アブストラクト 研究報告書 | 北海道大学大学院医学研究院 内科学分野 免疫・代謝内科学教室 | 抗リン脂質抗体症候群・全身エリテマトーデス関連神経障害のモデル動物作成 | 100 |
抗リン脂質抗体症候群・全身性エリテマトーデス関連神経障害 膠原病を代表する全身性エリテマトーデス(SLE)やその関連疾患である抗リン脂質抗体症候群(APS)にみられる中枢神経症状は難治性であり、患者の生命予後を左右するだけでなく、患者の生活の質に直結する。APSは抗リン脂質抗体(aPL)と呼ばれる病原性自己抗体が産生され、再発性血栓症や習慣流産などを引き起こす自己免疫疾患である。APSの半数はSLEに合併し、疾患スペクトラムはSLEに類似する。また、APSでもSLEと同様に低補体血症が報告されており、aPLを介した補体古典経路の活性化が想定されている1。 SLEに合併しないAPS(原発性APS)でも、脳梗塞のほかに、てんかん、舞踏病、横断性脊髄症、多発性硬化症様病態、認知機能障害など特長ある神経疾患が比較的高頻度に認められ、aPL関連神経疾患とよばれる。SLEの多様な中枢神経症状の主要な病態のひとつがこのaPL関連神経疾患に属すると考えている。 | |||
石井 直人 アブストラクト 研究報告書 | 東北大学大学院医学系研究科
免疫学分野 | ネフローゼ症候群における免疫細胞関与機構の解明 | 100 |
ステロイド感受性ネフローゼ症侯群では、免疫異常が病態形成に関与することが想定されているものの発症関連遺伝子の報告は極めて少ない。筆者らは、ステロイド感受性ネフローゼ症侯群を家族内発症した家族5人の全エクソームシークエンス解析を行い患者特異的にIL-1 receptor accessory protein(IL-1RAP)の複合ヘテロ接合型ミスセンス変異を見いだした。遺伝子再構成実験により患者由来のIL-1RAP変異体が機能低下型であることが証明されたことから、ネフローゼ症侯群発症におけるIL-1シグナル障害の関与が想定される。しかし、同定されたIL-1RAP変異は一家系由来であること、また、IL-1RAP欠損マウスでは腎炎易感受性が証明できなかったことから、IL-1RAP変異とネフローゼ症侯群発症の関連性の証明にはさらなる解析が必要である。 | |||
一戸 猛志 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学医科学研究所感染症国際研究センター 感染制御系ウイルス学分野 | DNAセンサーによるRNAウイルス認識機構の解析 | 100 |
細胞質中のミトコンドリアDNAはインターフェロン応答を誘導することが知られているが、RNAウイルスがミトコンドリアDNAを細胞質中へ放出するメカニズムは不明である。本研究では、RNAウイルスであるインフルエンザウイルスのM2タンパク質や、脳心筋炎ウイルスの2Bタンパク質のイオンチャネル活性がミトコンドリアDNAを細胞質中へ放出させるのに必要であることを明らかにした。インフルエンザウイルスや脳心筋炎ウイルス感染細胞で細胞質中に放出されたミトコンドリアDNAは、cGASやSTING依存的にインターフェロン応答を誘導した。野生型マウスおよびcGAS、STING欠損マウスにインフルエンザウイルスを感染させて、感染5日目の肺胞洗浄液中のウイルス量を測定すると、STING欠損マウスでウイルスの増殖が有意に増加していたことから、インフルエンザウイルスの抑制にも細胞内DNAセンサーが重要な役割を果たしていることが示唆された。 | |||
今井 孝 アブストラクト 研究報告書 | 群馬大学大学院医学系研究科 生体防御学 | マラリア原虫寄生赤芽球の生物学的意義 | 100 |
マラリアはエイズ、結核とならぶ世界3大感染症の一つであり、早急な制圧が望まれている。申請者らは、近年マラリア原虫が赤血球だけでなくその前駆細胞である赤芽球にも寄生するということを発見したが、マラリア原虫が何故数の少ない赤芽球に寄生するのか全く研究がなされていない。本研究においては、「原虫寄生赤芽球の生物学的意義」を探った。マウスにGFP発現Plasmodium yoeliiを感染後、抗マラリア薬であるピリメサミンの投与により治療した。その後、血中において原虫寄生赤血球が認められなくなった時点で、サンプリングしたところ脾臓の寄生赤芽球の存在が確認された。このことは、寄生赤芽球が抗マラリア薬に対してより抵抗性であることを示唆している。今後は、実験を繰り返すとともに、ピリメサミン投与後どれほど長く寄生赤芽球が存在し続けるか、他の抗マラリア薬投与でも同様であるかを確認する必要がある。 | |||
小内 伸幸 アブストラクト 研究報告書 | 金沢医科大学医学部 免疫学講座 | 胎児期における樹状細胞の分化制御機構解明と炎症性疾患における役割の解明 | 100 |
胎児は母体由来のアロ抗原や病原性微生物など様々な免疫刺激に暴露される危険がある。実際、妊娠中の母体の感染や炎症が胎児の脳の発達に影響を及ぼすことが報告されている。しかし、胎生期における病原性微生物に対する免疫反応を制御する樹状細胞に関しては不明である。我々はマウス胎仔肝臓中に樹状細胞様細胞及び同細胞の新規前駆細胞を同定した。現在まで、胎生期における樹状細胞の機能やその分化制御機構、さらに免疫・炎症反応制御機構は全く不明である。本研究では、胎生期樹状細胞とその前駆細胞の機能、炎症における役割を明らかにする。 | |||
小林 弘一 アブストラクト 研究報告書 | 北海道大学大学院医学研究院
免疫学教室 | NLRC5/MHC class I transactivator のGVHD発症における役割とメカニズム | 100 |
造血管細胞移植は血液悪性腫瘍に対する重要な治療法であるが、ドナーT細胞がレシピエント組織のアロ高原を認識する事により、30−60%のレシピエントにおいて重篤な合併症である移植片対宿主病(GVHD)を発症しうる。主要組織適合抗原MHCは一番重要なアロ抗原であるがGVHD発症時のMHC発現メカニズムはよく理解されていない。我々は近年MHC class I転写因子であるNLRC5を同定した。マウスGVHDモデルにおいて、NLRC5欠損群においては、ドナーCD8T細胞のサイトカイン分泌が低下し、炎症性細胞による組織障害が減弱していることが認められた。これらの結果からNLRC5がGVHD発症時のMHC-I発現誘導にも関与しており、NLRC5の活性を抑制する事が将来のGVHD治療戦略になる可能性が示唆される。 | |||
新中須 亮 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 分化制御研究室 | インフルエンザ感染における液性免疫記憶形成機序 | 100 |
インフルエンザワクチンの予防効果は、抗体が主要な役割を担っている。通常の感染では、ウイルスの変異が高頻度に生じるHead部位に対する抗体を保持するメモリーB細胞が多くを占めるが、パンデミック感染などでは、変異が生じにくいStem部位に対する抗体(万能記憶抗体)を有するメモリーB細胞が重要であることが証明されてきている。しかしながら、Stem部位に対するメモリーB細胞は生体内に非常に少なく、なぜ形成されづらいのかそのメカニズムははっきりしていない。そこで、今回我々は、1) サイレンシングモデル、2) アクセスモデル、3) 希少レパトアモデルの3モデルについて検証を行った。 その結果、B細胞がHAのstem部位にアクセスしづらいことが理由の一つである可能性が示唆された。ただし、希少レパトアモデルについては現在も検証中であり、この結果も合わせて最終的な結論を出す予定である。 | |||
大道寺 智 アブストラクト 研究報告書 | 京都府立医科大学大学院
医学研究科 感染病態学 | ヒト気管上皮細胞における鳥インフルエンザウイルスの感染機構の解明 | 100 |
鳥インフルエンザウイルス(Flu)は人獣共通感染症であり、公衆衛生学上、世界規模の問題である。鳥Fluはそのレセプターの観点からヒト気道においては深部呼吸器に感染することが示唆されているが、一方で細気管支よりも上位のヒト気道上皮では、鳥Fluがどの程度感染するのかついて、その詳細は不明であり解明が求められる。本研究ではヒト気管部位由来の上皮細胞株を樹立し、鳥Fluに対する感染動態を評価することを目的とした。初代気管上皮細胞由来の樹立細胞株を用いて、分離された年代・地域ともに、様々なウイルス株を用いて解析を行ったところ、用いた複数の樹立細胞は鳥Fluに対し、感受性を示した。また細胞表面上にウイルスレセプターも確認されたが、ウイルス感染性とウイルス粒子の結合量には必ずしも相関がなかったため、侵入後の過程で、感染が規定されているものと考えられる。現在その詳細について解析を進めている。 | |||
竹馬 俊介 アブストラクト 研究報告書 | 慶應義塾大学医学部 微生物学・免疫学教室 | エピゲノム調節機構不全による、自己免疫疾患発症メカニズムの解析 | 100 |
老化にともなって自己免疫疾患が発症する機構は多くが不明である。クロマチン調節因子であるTRIM28をマウスの免疫細胞で欠失させると、T細胞性の自己免疫疾患、炎症性遺伝子の発現などの免疫老化形質がみられ、この機構を追及することを目的とした。次世代シーケンスを駆使して、TRIM28欠損により、免疫細胞で抑制性ヒストン修飾(H3K9メチル化)が低下、それにともない、ゲノム上で、内在性レトロウイルス由来配列の脱抑制が起こること、この配列は脱抑制にともなって近傍の炎症性遺伝子を発現誘導する可能性が示唆された。本研究より、①老化にともない、免疫細胞に起こるエピジェネティックな変化と、②その、自己免疫疾患発症における役割の一端が明らかになった。 | |||
吉崎 歩 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学大学院医学系研究科・医学部 皮膚科学 皮膚科 | 医工連携によって実現した微量サイトカイン解析技術を用いた全身性強皮症の病態解明と新規治療ターゲットの同定 | 100 |
強皮症は自己免疫を背景に、皮膚および内臓諸臓器に線維化を来す予後不良の疾患であり、未だに有効な治療法が無く、新規治療法の開発が急務である。強皮症の病態形成においてサイトカインの重要性はこれまで多数報告されている。しかしながら、サイトカイン研究には、検出下限が一般的にpM程度であるという測定における大きな困難がある。このことは、極端に濃度上昇しているサイトカインしか現代の技術では捕らえ切れていないことを示唆しており、未だにサイトカインバランスの及ぼす病態への影響は明らかとなっていない。このことから、申請者は高感度のサイトカイン測定技術が必要であると考え、工学部との共同研究を行い、微量サイトカイン測定デバイスを開発した。本研究では、微量サイトカイン測定法を用いて強皮症の病態形成機序における研究を行った。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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蔵野 信 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学医学部附属病院 検査部 | スフィンゴシン1-リン酸に注目したHDLの抗血栓作用の解明 | 100 |
本研究では、「HDLの抗血栓作用はApoM/S1Pに(少なくとも部分的には)依存する」という仮説について疾患モデルマウスを用いて検討した。その結果、ApoM/S1Pには抗DIC作用があること、その機序としてApoM/S1PはNetosisを抑制すること、および、Netosis惹起後の臓器障害、DICの進行を抑制することが考えられること、さらには、リコンビナントApoMを用いることにより、HDLの多面的効果を治療医学的に応用できる可能性があることが分かった。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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曽根 正光 アブストラクト 研究報告書 | 千葉大学医学部医学研究院 イノベーション再生医学 | 血小板の産業的生産に向けた巨核球成熟のシングルセルアプローチ | 100 |
我々はこれまでiPS細胞技術に基づく人工血小板製造システムの構築を目指し、Dox誘導性の不死化因子を導入したimMKCL細胞株を樹立した。imMKCLは無限に増殖でき、Doxを除去すると一部の細胞は血小板を産生するが、大部分の細胞は未熟な状態に留まり、その効率の低さが産業化における障壁となっている。そこで本研究において、細胞形態を分化指標としてシングルセルレベルでの遺伝子発現比較解析を行い、そのようなimMKCL成熟の不均一性の要因を探索した。結果として、巨核球分化の最終段階であるproplateletの形成(PPF)が見られる細胞群は、PPFの見られない未熟な細胞群とは異なる遺伝子発現プロファイルを示した。今後、両細胞群で差のある遺伝子に注目し、解析を進めることでimMKCLの成熟を妨げる要因を排除し、より効率的な人工血小板の製造を実現できる可能性がある。 | |||
樋浦 仁 アブストラクト 研究報告書 | 東北大学大学院医学系研究科 情報遺伝学分野 | ヒト胎盤栄養膜幹細胞を活用したがん免疫細胞療法 | 100 |
がん免疫細胞療法では、主にNK細胞療法、樹状細胞療法などが利用されている。しかしながら、体外で培養する場合、免疫細胞の質的な低下だけでなく、がん患者の場合は、健常者に比べて質および量がさらに低下する。本研究では、ヒトTS細胞の細胞特性を活用し、がん免疫療法を行う際の安全かつ迅速な大量培養の検討を目的とした。ヒト末梢血単核細胞を培養液A:ヒトTS細胞培養液、培養液B:未分化TS 細胞を培養した培養液を含んだTS細胞培養液(CT-CM)、培養液C:ST 細胞を培養した培養液を含んだTS細胞培養液(ST-CM)にて培養し、細胞増殖能、細胞遊走能および抗酸化酵素遺伝子発現量について検討した。その結果、ST細胞の培養液中には、免疫細胞を増殖し、細胞遊走能が最も高いことが判明した。ST細胞の生理学的活性物質は、がん免疫細胞療法に有効である可能性が示された。 | |||
森脇 健太 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学大学院医学系研究科 細胞生物学 | 赤血球脱核と形態維持における細胞内膜輸送系の役割 | 100 |
上皮細胞の極性の形成維持には細胞内での方向性のある小胞輸送(極性輸送)が重要であり、我々はその分子機構並びに生理的・病理的意義の解析を行ってきた。その中で、小腸上皮細胞でアピカル面(管腔側)への極性輸送を司る分子としてEHBP1L1を以前に同定した。EHBP1L1ノックアウト(KO)マウスを作成したところ、胎生期後半から明らかな貧血を呈し、生後数時間以内に全て死亡した。KOマウスの末梢血で多くの有核赤血球が観察され、また、溶血性貧血の指標となる肝臓での鉄の沈着が見られた。このことから極性輸送制御分子EHBP1L1が赤血球の脱核とその形態の維持に非常に重要であることが明らかとなった。赤血球系細胞は非極性細胞であるが、脱核過程では核を押し出す方向に向かって極性が形成される。非極性細胞での一過的な極性形成の場面でもEHBP1L1が重要なことは、極性輸送機構の普遍性・共通性を示唆している。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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梅本 晃正 アブストラクト 研究報告書 | 熊本大学 国際先端医学研究機構 幹細胞制御研究室 | 造血幹細胞の自己複製分裂時におけるThrombopoietin 応答のチューニング | 100 |
骨髄組織損傷後のストレス造血時では、造血幹細胞は活発に分裂を繰り返えし、造血組織再構築を主導すると考えられている。しかしながら、造血幹細胞が「自己複製分裂」と「分化分裂」を使い分ける機構に関しては未だに不明な点が多い。本研究では、 ミトコンドリア制御によって、造血幹細胞の増殖・維持・分化を司るサイトカイン“Thrombopoietin (TPO)”の応答を幹細胞性維持・増殖用にチューニングすることで、自己複製分裂が誘導されるとの仮説の下、造血幹細胞の運命決定機構の本質に迫ることを目的としていた。その結果、造血幹細胞が主に幹細胞を生み出す分裂はミトコンドリア代謝に依存しており、前駆細胞を生み出す分裂はミトコンドリアに依存していない可能性が示唆された。従って、本研究の成果は試験管内の造血幹細胞増幅や、骨髄移植療法時のドナー幹細胞の自己複製分裂のサポート等、主に骨髄移植療法の発展に大きく寄与するものと考えられる。 | |||
細川 健太郎 アブストラクト 研究報告書 | 九州大学大学院医学研究院 幹細胞再生修復医学分野 | テロメア結合因子による造血幹細胞の自己複製制御機構の解明 | 100 |
テロメアの安定性は細胞の生存だけでなく、代謝の恒常性に対しても影響を与えることが明らかになってきている。我々は以前テロメア結合因子shelterinのうちPot1aの機能について解析を進め、Pot1aが造血幹細胞(HSC)におけるテロメアDNAの損傷応答の抑制と、エネルギー代謝調節に関与することを見出した。また近年、別のshelterin因子Tin2はミトコンドリアの代謝調節に関与することが報告されている。そこで本研究ではTin2の局在に焦点を当て、HSCの代謝や自己複製に対する影響を明らかにすることを目的とした。増殖中のHSCにおいて、Tin2はミトコンドリアへの移行が見られ、エネルギーと共にROSの産生を増加させ、このことがHSCの自己複製に対し負に働くことが考えられた。一方Tin2の局在を核内に集積させるため、Tpp1やPot1を導入したところ、Tin2のミトコンドリアへの移行を抑え、低速度の自己複製型分裂を促進できることが示唆された。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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伊藤 綾香 アブストラクト 研究報告書 | 名古屋大学環境医学研究所 分子代謝医学分野 | 細胞内脂質代謝に着目した自己免疫疾患の新たな病態メカニズムの解明 | 100 |
近年、様々な疾患の基盤病態として慢性炎症が注目されている。研究代表者はこれまでに、核内受容体LXRに着目し、細胞内の脂質蓄積が炎症性サイトカインの発現亢進や自己免疫疾患の原因となることを見出した。しかしながら脂質代謝と自己免疫疾患との関連性について直接的な因果関係は不明である。 本研究では、代表的な自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)に着目して研究を進めた。遺伝性あるいは薬剤誘導性の複数の異なるSLEモデルマウスを用いた解析を行うことにより、自己抗体価の上昇や腎臓へのイムノグロブリンの沈着が認められる以前の、病態の早期から免疫細胞自律的な脂質蓄積を認めることを見出した。また、SLEモデルマウスにオメガ3脂肪酸を投与することによりSLE病態の一部が改善したことから、早期の脂質代謝の改善がSLE治療標的となる可能性が示唆された。 | |||
近藤 泰介 アブストラクト 研究報告書 | 慶應義塾大学医学部 微生物学・免疫学教室 | 代謝リプログラミングによるステムセルメモリーT細胞の誘導とがん免疫療法への応用 | 100 |
近年ステムセルメモリーT細胞(TSCM)の形質を有するキメラ型抗原受容体(CAR)-T細胞療法がCAR-T療法に比べて、高い治療効果を示すことがわかった。我々はCAR-T細胞を Notchリガンドを発現するフィーダー細胞と共培養し、CAR-iTSCM細胞を誘導することに成功した。またCAR-iTSCM細胞の誘導にはミトコンドリアの代謝リプログラミングが重要であること特定した。さらにNotchシグナルの下流因子であるFOXM1を同定し、代謝学的変化およびiTSCM細胞の誘導に重要であることを見出した。Notchシグナルで作成されたCAR-iTSCM細胞と同様にFOXM1の強制発現でCAR-iTSCMと同等の細胞が得られ、これらのTSCM細胞様CAR-T細胞はヒト白血病モデルマウスにおいて強い抗腫瘍効果を示した。我々はCAR-iTSCM細胞を従来のCAR-T療法に代わる新たな細胞移入療法として提案する。 | |||
西出 真之 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学 | ANCA関連血管炎における好中球免疫チェックポイント分子の機能解析とその治療応用 | 100 |
本研究は、ANCA関連血管炎(AAV)におけるセマフォリンの病態学的関与を明らかにし、新たな治療法、診断法の開発に繋げることを目的とした。AAVの病型のうち、高度な腎炎を呈するMPAと、好酸球性副鼻腔炎を合併するEGPAを研究対象とし、血管炎モデルマウスの立ち上げを行った。MPAモデルは、ヒトの病態に非常に近い重篤な腎血管炎をマウスに発症させることに成功した。同モデルの発症に成功した事例は本邦初であり、引き続き前臨床試験、病態解明に取り組む所存である。好酸球性副鼻腔炎モデルについては抗セマフォリン抗体を用いた治療実験までを完了し、抗セマフォリン抗体が好酸球性血管炎の軽減をもたらすことが明らかとなった。本研究を通じて、セマフォリンは好中球だけでなく、好酸球にも発現し、血管炎に密接に関連している事が明らかとなった(論文投稿中)。セマフォリンを標的とする治療がAAVの全病型に幅広く有用である可能性がある。 | |||
早河 翼 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学医学部附属病院 消化器内科 | アドレナリン依存性内皮細胞Immunogenic reprogrammingを介した腫瘍免疫機構の解明 | 100 |
本研究では、胃腫瘍内アドレナリンシグナルによる、免疫応答制御機構のメカニズムを検討し、治療応用の可能性を検証した。血管内皮細胞に発現するADRB2を介したカテコラミンシグナルが腫瘍内のPDL1陽性F4/80陽性マクロファージ分画とCD80陽性CD11b陽性骨髄球分画を誘導していた。胃腫瘍オルガノイド移植マウスにAdrb2阻害剤を投与したところ腫瘍内骨髄球分画の減少、特にPD-L1を発現する分画の減少を認め、腫瘍内T細胞の増加を認めた。またAdrb2阻害剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用投与を行ったところ、コントロールおよびAdrb2阻害剤/免疫チェックポイント阻害剤単剤群に比べより効果的な腫瘍サイズ縮小効果が認められた。以上の結果より、Adrb2阻害剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用を含めた胃癌に対する新規治療法の可能性を提示することができた。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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井上 毅 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 分化制御研究室 | 記憶B細胞産生の分子メカニズム | 100 |
記憶B細胞および長期寿命プラズマ細胞は液性免疫の中心としてはたらく細胞であり、記憶B細胞の産生メカニズムの解明は、ワクチン開発戦略における重要な課題である。前年度までの成果で、転写因子Bach2欠損マウスにおける記憶B細胞産生異常の原因の一つが、エネルギー代謝の異常亢進であることが分かった。そこで本年度は新規マウスモデルを導入し、野生型の胚中心B細胞に特異的・誘導的に代謝状態を変化させる実験系を開発した。その結果、mTORC1活性は胚中心B細胞分化に重要な役割を果たしており、低代謝状態は記憶B細胞分化を亢進させる効果を持つことが明らかになった。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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(留学先) | |||
鈴木 紗織 | 滋賀医科大学医学部 病理学講座 疾患制御病理学部門 | 呼吸器感染症における欠損ウイルス(DVG)と免疫抑制因子による慢性化機序の解明 | 500 |
University of Pennsylvania, U.S.A. | |||
千藤 荘 | 神戸大学医学部附属病院 膠原病リウマチ内科 | 関節リウマチにおけるインバリアントナチュラルキラーT細胞の役割 | 500 |
University of California San Diego, U.S.A. |