研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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青木 友浩 アブストラクト 研究報告書 | 東京慈恵会医科大学 薬理学講座 | 学際的研究による血行力学応力負荷による血管病の発症機構の解明 | 100 |
本研究開発では、血行応力負荷依存的な血管病の発症進展機構の解明のために、血行応力負荷として高いずり応力を、誘発される疾患として脳動脈瘤を対象とした。そして、高いずり応力依存的な脳動脈瘤発症機構の解明を目的とした。検討では、確立済みの脳動脈瘤を血行力学応力負荷の元で誘発するモデル動物(ラット)に、P2X4の遺伝子欠損ラットを供するないし選択的P2X4阻害薬を投与することにより、脳動脈瘤発生に対するP2X4の寄与を検証した。P2X4のホモ欠損および選択的P2X4阻害薬NCー2600の投与により、モデル動物での脳動脈瘤発生が有意に抑制された。さらに、ヒト脳動脈瘤病変部でのP2X4の発現を免疫組織化学により確認し、ヒトへの外挿性を明らかとした。当該研究開発の結果は、高いずり応力依存的な脳動脈瘤発生をP2X4が仲介することを明らかとし、選択的P2X4阻害薬の脳動脈瘤治療薬としての可能性を見出した。 | |||
吾郷 哲朗 アブストラクト 研究報告書 | 九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 | 炎症惹起シグナルIL-33/ST2による脳梗塞内ペリサイト動員と組織修復の分子機構 | 100 |
脳梗塞超急性期の再灌流療法(=神経保護療法)は確立したが、脳梗塞発生後の機能回復治療はリハビリテーション治療に依存し未だ薬物治療は存在しない。我々を含む国内外の研究成果により「梗塞内壊死物(デブリス)の除去=組織修復」が機能回復を促進する可能性が示唆されている。この組織修復遂行過程において、梗塞内・内皮細胞周囲へのペリサイト再動員が重要であると考えられ、本研究ではペリサイトの発生・動員機構についての検討を行った。CD34陽性・内皮前駆細胞が健常脳に在住し、脳梗塞後、梗塞周囲領域で内皮細胞のみならずペリサイトに分化する可能性を見出した。この過程にIL-33/ST2シグナルが重要な役割を果たす可能性があり、ST2ノックアウトマウスを用いて検証を行っている。本研究成果が脳梗塞機能回復に対する薬物治療開発の一助となることを期待している。 | |||
金澤 雅人 アブストラクト 研究報告書 | 新潟大学脳研究所臨床神経科学部門 脳神経内科学分野 | タウ蛋白質蓄積による脳血管性認知症の病態制御 | 100 |
高齢化社会で問題となっている認知症の原因とその治療を脳血管障害からアプローチし、脳血管性認知症、アルツハイマー病も含めた治療戦略に挑戦した。ストレス応答後生じるタウ蛋白質発現は、過剰となることで認知症の発症機序に関与する。また、タウ蛋白質の異常発現には、脳内の炎症性細胞であるミクログリアが重要な役割を果たしていると考えられている。ミクログリアは脳梗塞後に経時的にその性質を変化させるが、脳虚血モデルを用いて、タウ蛋白過剰発現と認知機能低下を検証した。結果1.脳梗塞後にリン酸化タウが蓄積し、認知機能低下に関係すること、2.ミクログリアが直接リン酸化タウの蓄積に関係すること、3.脳梗塞後早期のミクログリアが関与し、発症7日後以降のミクログリアはリン酸化化タウ蓄積、認知機能低下には関係しないことを明らかにした。現在、適切なミクログリアを増やす薬剤の開発を検討している。 | |||
佐々木 勉 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学医学系研究科 神経内科学 | がん関連脳梗塞の病態解明にむけた検討 | 100 |
がん関連血栓塞栓症は、がん患者の予後に大きく影響する因子である。ガイドラインがある静脈血栓症に対して、脳梗塞などのがん関連動脈血栓症に関する治療は未確立である。そこで本研究課題においては、基礎と臨床の両面からがん関連脳梗塞の病態を明らかとする。がん関連脳梗塞において、臨床像と血液データを組み合わせた脳梗塞発症を予知するマーカーや新たなスコアを開発する。開発コホートのデータから、がん診断後2年以内の虚血性脳卒中を予測する新たなスコア(CASスコア)を作成した。ROC解析のc統計量より、CASスコアは、Khoranaスコアよりも優れた性能を示した。基礎研究では、担がん脳梗塞モデルにおいて、脳梗塞後のCXCL-1, IL-6値が上昇し、STAT3シグナル活性化を認め、これらのシグナルががん関連脳梗塞の病態増悪に関与していることが示唆された。 | |||
田中 寛大 | 国立循環器病研究センター 脳血管部門 脳卒中集中治療科 | 心房細動関連脳梗塞に対する経皮的左心耳閉鎖術と経口抗凝固薬の併用療法の有効性検証のための多施設共同研究 | 100 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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網野 真理 アブストラクト 研究報告書 | 東海大学医学部 循環器内科(救命センター 救命救急科) | 不全心に対する放射線治療を用いたリバースリモデリングの試み | 100 |
近年、心室頻拍/心室細動(VT/VF)に対する新たな治療法として、体幹部定位放射線治療(SBRT)が注目されている。外科的処置を必要とせず、約15分で照射が完了するため、患者に低侵襲なアプローチである。これまでの研究では、重粒子線照射が心筋梗塞ウサギモデルにおいてVT/VFの誘発性を軽減することが示されてきた。本研究の目的は、アドリアマイシン(ADR)による心不全モデルを用いて、低線量重粒子線が心筋のリプログラミングを促進し、心機能を回復させる可能性を検討することである。具体的には、心筋障害の軽減効果や分子生物学的変化を評価する。NZWウサギを用いた実験では、重粒子線照射後、心電図検査や心臓超音波検査においても有意な改善が確認された。遺伝子解析では、p53やCx43の発現が増加し、心筋のリモデリングに寄与する可能性が示唆された。治療効果の持続性や安全性についてのさらなる研究が必要である。 | |||
市村 創 アブストラクト 研究報告書 | 信州大学医学部 外科学教室 心臓血管外科学分野 | 自家iPS細胞由来心筋細胞を用いた心筋再生療法の実用化研究 | 100 |
増加する心筋梗塞後心不全に対する新たな治療法として、多能性幹細胞(ES細胞/iPS細胞)由来心筋細胞を用いた心筋再生療法の可能性が注目されている。 本研究の目的は、ヒトに近いカニクイザルを用いて慢性心筋梗塞モデルにおける自家iPS細胞由来心筋細胞移植治療の有効性と安全性を明らかにすることである。 カニクイザル皮膚組織よりiPS細胞を作製、心筋細胞の分化誘導を行う。作製した心筋細胞を、心筋梗塞後12週が経過した慢性心筋梗塞モデルカニクイザルに自家、もしくは他家移植し、移植後の免疫応答、グラフト生着の程度を評価する。生じた免疫反応の状況に応じて、免疫抑制剤の必要性および使用薬剤、使用量などを検討する。 自家移植、他家移植、Vehicleコントロール計15頭のカニクイザル試験を実施した。各群3頭は細胞移植後4週、残り2頭ずつは移植後12週で心摘出を行った。現在組織解析を進め、近日中に論文投稿を予定している。 | |||
上田 和孝 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学医学部付属病院 循環器内科 | 心不全における心臓周囲脂肪組織と心臓間の組織連関の分子メカニズムの解明 | 100 |
最近の臨床研究では、PeAT肥大と心不全、冠動脈疾患、不整脈などの様々な心疾患との間に強い関連性があることが明らかにされている。本研究では、マウス圧負荷モデルを用いて、PeAT肥大が病的な心臓リモデリングを増悪させる新たな病態メカニズムを解明した。我々は、肥満環境において肥大したPeAT内でのLipolysis障害が、圧負荷下での心不全の発症において重要な役割を果たすこと、そしてLipolysisを回復させることで心保護効果が得られる可能性があることを示した。これらの知見は、心不全の進行に関する新たなメカニズムを示唆するとともに、心不全治療における心臓周囲の脂肪組織代謝を標的とした新たな治療戦略の可能性を示すものである。 | |||
扇田 久和 アブストラクト 研究報告書 | 滋賀医科大学 分子病態生化学 | 心血管系老化における低分子量Gタンパク質の新たな作用機構 | 100 |
超高齢社会を迎えた日本において、老化による心機能低下や血管疾患の発症は急増している。これらの疾患は生活の質の悪化や健康寿命の短縮に関連するだけでなく、寿命そのものを縮める原因にもなる。本研究では、低分子量Gタンパク質RhoAに着目し、心筋特異的あるいは血管平滑筋特異的RhoAコンディショナルノックアウトマウスを作製して個体レベルで心血管系老化のメカニズム解析を行った。その結果、RhoAは心筋や血管の老化を抑制する作用があり、その作用により心機能低下や心不全、腹部大動脈瘤の発症といった致命的な疾患の発症を抑制していることを明らかにした。さらに、心筋RhoAはパーキンの発現促進を介してミトコンドリアの機能維持を担っており、血管平滑筋RhoAはMAP4K4の活性制御によりErkの活性化を調節して大動脈中膜での炎症抑制、強度維持に関与しているという分子メカニズムも解明した。 | |||
大野 聖子 アブストラクト 研究報告書 | 国立循環器病研究センター 分子生物学部 | 早期再分極症候群の病態解明と新規治療薬開発 | 100 |
早期再分極症候群 (ERS) は心電図での早期再分極と心室細動を特徴とする疾患で若年者突然死の原因となる。私たちは一過性外向きカリウム電流 (Ito) のαサブユニットをコードするKCND3の機能獲得型変異の遅延した不活性化がERSの原因となり、キニジンが不活性化正常化に有効であることを報告している。そこでキニジンの代替薬として、Ito抑制効果のある選択的セロトニン再取り込み抑制薬 (SSRI) の一つであるフルオキセチンの変異KCND3に対する効果を調べた。 その結果、変異KCND3による遅延不活性化はフルオキセチンの投与により、濃度依存性に改善された。さらに10μmol/L程度の低濃度で、ほぼWTの場合と同様の不活性化に改善することがわかった。 今後、iPS由来心筋細胞などを用いて、心筋活動電位へのフルオキセチンの影響等を調べる予定である。 | |||
小尾 正太郎 アブストラクト 研究報告書 | 獨協医科大学 先端医科学研究センター | 心不全で特異的に出現する線維芽細胞の機能を解明する | 100 |
心不全は現時点では増加し、予後が不良な心不全患者がいまだに多いのが現状である。そこで新たな治療標的の探索が必要とされている。 心臓1細胞解析から心不全患者に特徴的な細胞集団を同定し、その集団ではTRPV4を高発現していた。また、ノックダウン実験よりTRPV4が細胞の活性と分化を制御していることが分かった。そこで本研究では、TRPV4下流の新たなシグナルの同定を試みた。TRPV4と結合する因子としてARRB2が挙げられ、現在同定実験を行っている。また、ARRB2がTRPV4の刺激で細胞質から核内に移行すること分かった。ARRB2の刺激でCTTNB1が活性化することが報告されており、今回新たにTRPV4の刺激でCTTNB1が活性化することが分かった。以上の結果より、TRPV4-ARRB2ーCTTNB1のシグナルにより細胞の分化と活性を制御していることが新たに分かった。今後さらに細部を検討することにより新たな心不全治療が開発されると期待できる。 | |||
酒井 宏冶 アブストラクト 研究報告書 | 国立感染症研究所 | 心臓オルガノイドを用いたウイルス性心筋炎の包括的研究 | 100 |
新型コロナウイルス(SARS2-CoV-2)の主な病態はウイルス性肺炎であるが、心筋炎を含む心臓障害も報告されている。ウイルス性心筋炎の病原性発現機序は詳細には解明されていないため、ヒトiPS細胞由来の心臓オルガノイドを用いることで、SARS-CoV-2等による心筋炎の病態発現機序を詳細に解析した。心臓オルガノイドにおいて、SARS-CoV-2株間でウイルス増殖能に有意な差があり、臨床で病原性が強かったAlpha株、Gamma株、Delta株では増殖性が高いことが明らかになった。シングルセル解析により、感染細胞と非感染細胞の遺伝子発現の違いや、感染の進行段階ごとに細胞群が識別され、ウイルスに対する心筋細胞の異なる感受性が浮き彫りとなった。また、感染によって特定の遺伝子発現が増減することが確認され、新たな治療標的の候補となる遺伝子が特定された。 | |||
貞廣 威太郎 アブストラクト 研究報告書 | 筑波大学医学医療系 循環器内科 | 拡張不全型心不全の線維化機構解明と革新的治療法の開発 | 100 |
我々は心臓線維芽細胞から直接心筋細胞を誘導する「心筋ダイレクトリプログラミング法」を開発し、心筋梗塞マウス、収縮力が低下した心不全マウスにおける心臓再生と、心臓線維化と心臓機能の改善に成功した。心不全は収縮力が低下した心不全と、拡張不全に二分されるが、これまで、有効な治療法のない拡張不全にもこの方法が適用できるかは不明であった。そこで本研究では、心臓線維芽細胞において心筋リプログラミング遺伝子の発現を薬剤投与によって自由に制御できる遺伝子改変マウスを開発し、このマウスを用いて、心筋ダイレクトリプログラミングにより、拡張不全の線維芽細胞から心筋細胞が再生し、心臓線維化と心臓機能が改善することを明らかにした。さらに、心筋リプログラミング遺伝子の一つであるGata4遺伝子が心臓線維化治療に重要であることを発見し、Gata4遺伝子単独の遺伝子導入による、心臓線維化改善効果を介した拡張不全の治療法を開発した。 | |||
清水 逸平 アブストラクト 研究報告書 | 国立循環器病研究センター研究所 心血管老化制御部 | 内在性選択的老化細胞除去システムによる動脈硬化性疾患リバース法の開発 | 100 |
選択的老化細胞除去(セノリシス)効果を発揮するハーブC及び成分Cは老化細胞で補体経路を活性化させ、老化細胞を除去することがわかった。老化細胞特異的補体経路活性化マウスを開発し、内在性老化細胞除去システムの構築を目指した。プロテオミクス解析を含む検討により、補体防御因子抑制を介したMAC形成により選択的老化細胞除去効果が発揮されることが明らかになった。成分Cが補体防御経路を抑制するメカニズムの解明、in vitro及びin vivoのセノリシス・ライブセルイメージングを目指し、in vitroの系は開発が完了した。in vivoの系は遺伝子改変動物の作製を含め進行中である。引き続き遺伝子改変動物を用いた検討を行うことで、老化細胞特異的補体経路活性化による老化細胞除去が個体に与える影響の検討を行うことが可能となる。 | |||
清水 峻志 アブストラクト 研究報告書 | 昭和大学臨床薬理研究所 | 心臓老化におけるPERKとPD-L1の役割の解明 | 100 |
本研究は、加齢による心筋細胞の老化マーカーPD-L1の発現制御を、PERKシグナリングの観点から解明することを目的としています。PERKシグナリングがタンパク質恒常性を維持し、心保護作用を持つことが既に報告されており、本研究では特に老化マーカーであるPD-L1とSGLT2の発現に焦点を当てました。若年および高齢のPERKノックアウト(KO)マウスとコントロールマウスを比較した結果、高齢PERK KOマウスでのみPD-L1の発現が顕著に増加していることが確認された。さらに、PD-L1+心筋細胞では、タンパク質翻訳開始因子とPERK結合タンパク質であるFLNAの発現がRNAおよびタンパク質レベルで亢進していた。今後、老化マーカーであるPD-L1の発現がこれらの因子によってどのように制御されるかを解明する必要があり、研究成果は学会や学術誌で公表する予定である。 | |||
園田 桂子 アブストラクト 研究報告書 | 国立循環器病研究センター メディカルゲノムセンター | ロングリードシークエンサーを用いたDSG2 compound heterozygous変異検出による、不整脈原性右室心筋症の遺伝的背景の解明 | 100 |
不整脈原性右室心筋症(ARVC)の主たる原因はデスモソーム関連遺伝子である。我々は先行研究において、日本人ARVC患者では常染色体潜性遺伝形式をとるDSG2変異が最も多いことを明らかにした。しかし複数のDSG2変異を持つ15人の発端者では、家族のゲノム情報がないためcompound heterozygous変異か否か不明であった。そこで、我々はNanoporeシークエンサーを用いてamplicon-based long-read sequencing (LRS) によるハプロタイプ解析を行い、15名全員のDSG2変異がcompound heterozygous変異であることを明らかにした。これにより日本人ARVC発端者159人のうち、38人がDSG2のcompound heterozygous変異を有していることが分かった。潜性遺伝性疾患ではcompound heterozygous変異の確認は重要であるが、DSG2変異によるARVCは発症が遅く両親がいない場合があるため、変異を直接phasingできるamplicon-based LRSは大変有用であった。 | |||
竹内 純 アブストラクト 研究報告書 | 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 分子発生・口腔組織学分野 | 胎児心臓・頭頸部形成異常を誘引する母体ストレスの催奇性研究 | 100 |
近年、環境ホルモン(内分泌撹乱物質)の一つ、コルチゾールが母体の環境変化に伴う胎児形成異常を誘引する可能性が議論された。 母体ストレス依存して産生が高まるコルチゾールはRAと同様な分子機能を持ち、核内での標的遺伝子の転写制御も酷似している。そこで、直接的な影響を知るために構築した胎盤非依存型成育環境下で、デキサメタゾン(DEX)暴露を受けた胎仔は心血管・頭頸部の形成異常が生じることを見出した。両領域形成に重要な遺伝子群のうち頭部間葉系細胞で発現する遺伝子群の発言が減少、側板中胚葉の遺伝子群の発現亢進が見受けられた。特にCyp26群のエンハンサー領域でのヒストンH3k27ではトリメチル化されていた。一方、Nr2f1/2およびRaldh2遺伝子群のエンハンサー領域でのヒストンH3k27ではアセチル化が亢進していた。 | |||
辻 幸臣 アブストラクト 研究報告書 | 名古屋大学大学院医学系研究科 循環器先端医療研究学寄附講座 | 心室細動ストームの成立機序:PDK4過剰発現の役割と治療標的としての可能性 | 100 |
心室細動(VF)が成立するには通常、心室性不整脈が発生し、それがVFへ移行・維持する段階を経るが、その成立機序は必ずしも明らかでなく、また、関与する分子基盤の知見も乏しい。本研究では、VFの成立機序、特にVFへの移行・維持を促す分子メカニズムを解明するために、液体クロマトグラフ質量分析計を用いて、VFストーム家兎モデルの心室筋組織のプロテオーム解析を行った。1,938個の蛋白が同定され、106個の蛋白に発現変化が認められた。統合パスウェイ解析の結果、顕著な有意差をもって、ミトコンドリア機能異常が推測された。次いで、TCAサイクルと呼吸電子伝達系、ATP生成に加え、ケトン体分解、酸化的リン酸化、脂肪酸β酸化等、ミトコンドリア関連経路の多くが不活性化されていた。以上より、ミトコンドリア障害によるATP低下が、VFストームの病態に重要な役割を果たしていることが示唆された。 | |||
寺本 了太 アブストラクト 研究報告書 | 理化学研究所 生命医科学研究センター 応用ゲノム 解析技術研究チーム | 拡張型心筋症オミックスを用いた心筋変性機構の解明 | 100 |
拡張型心筋症は、Lamin A/C遺伝子(LMNA)変異による場合、徐脈性不整脈と心筋線維化を伴い重篤化する。本研究では、ゼブラフィッシュlmnaノックアウト(KO)モデルを作成し、分子病態の解明を目指した。光学マッピング解析によりKO体では房室結節および心室の興奮伝導速度低下を確認し、RNAシーケンス解析ではカゼインキナーゼ2(CK2)のサブユニット(zgc:194210)の異常な活性化を検出した。さらに、zgc:194210のノックダウンやCK2阻害剤(Silmitasertib)の投与により、心筋Caイオン流および興奮伝導速度の回復が観察され、CK2経路の抑制がlmna変異による心筋障害を改善することが示された。これにより、LMNA変異DCMにおけるCK2の役割が明らかとなり、CK2阻害が新たな治療戦略となる可能性が示唆された。 | |||
名越 智古 アブストラクト 研究報告書 | 東京慈恵会医科大学 内科学講座 循環器内科 | 心不全の病態における生体温度調節と代謝制御に関する基礎的・臨床的研究 | 100 |
ナトリウム利尿ペプチド(ANP, BNP)のエネルギー代謝への関与が注目されている。本研究では、低温環境ならびに酸素欠乏環境が心筋細胞におけるBNP産生に及ぼす影響について検討した。仔ラット初代培養心筋細胞を低温環境で培養したところ、BNPmRNAレベルは低下傾向を示した。また無酸素環境では、BNP産生は有意に低下したが、再酸素化により回復した。メカニズムの一つとして、無酸素による心筋NHE1活性低下が関与していることが示唆された。心血管疾患の病態に関連する様々な因子の多くが、心臓におけるBNP産生を促進させる一方で、低温及び無酸素という二つの因子が、少なくとも心筋細胞単独に影響を及ぼした場合に、逆にBNP産生を抑制するということがわかった。心筋梗塞をはじめとする様々な心血管疾患において、単一の心臓組織内でも、無酸素領域と低酸素領域で心筋細胞の生物学的応答が根本的に異なる可能性が示唆された。 | |||
西山 崇比古 アブストラクト 研究報告書 | 慶應義塾大学医学部 循環器内科 | 塩基編集を用いた難治性心筋症の新規治療法の構築 | 100 |
本研究では、Prime Editing (PE) を用いて心筋症の原因となる遺伝子変異の修復技術を構築することを目的としました。PEは、逆転写酵素とプライムエディターガイドRNA (pegRNA) を組み合わせることで、特定の塩基対の置換、挿入、削除を高精度で実現する遺伝子編集技術です。拡張型心筋症 (DCM) に関連するRBM20遺伝子の変異 (R634W, S635A, S637G, P638L) を対象に、HEK293細胞株を作成し、サンガーシークエンスにより正確な変異導入を確認しました。その後、遺伝子編集を行うために新規のプラスミド(gag-MCP-pol、gag-PE、MS2-epegRNA-Dnmt1)やウイルス様粒子を作成しました。最終的に、R634W と S635A 変異を持つ細胞株において、PEによる遺伝子編集が成功したことを確認しました。本研究は、PE技術の可能性を示し、特に心筋症の治療における応用の基盤を築くものです。 | |||
福田 大受 アブストラクト 研究報告書 | 大阪公立大学大学院医学研究科 循環器内科 | 自然免疫からみた運動の動脈硬化抑制機序の解明と動脈硬化性疾患治療への応用 | 100 |
冠動脈疾患の加療については、血管形成術が必ずしも患者予後を改善するわけではなく、血管形成術を主体とした治療方法は、変革期を迎えている。そこで重要になってくるのがリスク管理の強化と動脈硬化の基盤病態である慢性炎症に対する抗炎症治療の開発である。動脈硬化が血管の慢性炎症であることが明らかになって久しいが、有効な抗炎症治療方法は開発されていない。本研究は、核酸断片を介した自然免疫の異常活性化が、血管の慢性炎症と動脈硬化を惹起することに注目し、核酸断片の分解に寄与するDNase II(DN2)を介した新たな抗炎症治療の開発を目指すものである。今回の研究でDN2の欠損が動脈硬化を促進させることと、DN2の過剰発現がマクロファージの炎症性活性化を抑制することを明らかにした。 | |||
松島 将士 アブストラクト 研究報告書 | 九州大学大学院医学研究院 循環器内科学 | 心筋炎症における細胞質ミトコンドリアDNA制御機構の解明 | 100 |
本研究はミトコンドリア機能障害という観点から心筋細胞の細胞質にmtDNAが出現する機序およびその制御機構を解明し、新たな心筋炎症、心不全の治療法の確立を目指すものである。本100μM)添加により最大呼吸能の低下を認めた。H2O2添加により同様に細胞質ミトコンドリアDNAと小胞体ストレスマーカでの上昇も認めた。さらに、様々なタンパクの評価を行いゴルジ体形態維持に関連するタンパク群の変化を同定した。上記で同定したタンパクの阻害薬投与により心不全モデルマウスに投与したところ、心筋組織の酸化ストレスマーカの減少に伴い、左室駆出率の改善および左室拡張末期径の縮小を認めた。ミトコンドリア障害に伴う細胞質ミトコンドリアDNAに小胞体ストレスやゴルジ体制御が関連していることが示唆された。また、これらの因子に関わる新たなタンパクへの介入が心不全の改善につながる可能性がある。今後は炎症の変化の評価が重要と考えられた。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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安藤 康史 アブストラクト 研究報告書 | 国立循環器病研究センター研究所 心臓再生制御部 | ペリサイトを基点とした新たな脳梗塞急性期炎症調節機構の理解と創薬展開 | 100 |
脳梗塞は主要な死因を占めるとともに要介護リスクが極めて高く、その制圧が強く望まれる。本研究では、役割が十分に解析されていない毛細血管を被覆するペリサイトに着目した研究を実施した。その結果、新たなペリサイトと周囲細胞との機能的連関が見出され、ペリサイトが急性期組織傷害の進展に重要な役割を担う可能性が示唆された。さらに、ペリサイトに作用して、脳梗塞病態を改善させる候補薬剤が見出され、臨床応用に向けた重要な基盤を形成することができた。 | |||
小泉 聡 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学医学部 脳神経外科 | 四次元位相コントラストMRIによる脳動脈瘤の弾性評価 | 100 |
心拍周期中の血流変化を測定可能な4D Flow MRIが脳動脈瘤の弾性の評価に応用可能か検討した。25患者27脳動脈瘤を対象とした。4D Flow MRIを用い,動脈瘤の近位および遠位の血管断面で動脈脈波を測定し,入口面と出口面の間でのdampingの程度をaneurysm damping index(ADI)と定義するとADI測定は全例で可能であった。動脈瘤側のADIは対側脳血管におけるdampingよりも有意に大きく,動脈瘤に特異的なdampingが観察されているものと思われた。関連する臨床因子に関する多変量解析ではADIはβブロッカーの使用と正の相関,喫煙歴と負の相関を示した.提示手法は脳血管の弾性に着目した非侵襲的かつ定量的な解析であり,その臨床的有用性について今後さらなる検討が期待される。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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江本 拓央 アブストラクト 研究報告書 | 神戸大学大学院医学研究科 循環器内科学分野 | 大動脈弁狭窄症への先制医療の開発 | 100 |
大動脈弁狭窄症(AS)は大動脈弁が動脈硬化性変化によって硬化し、左室から上行大動脈への血流が妨げられる病態であり、高齢化社会において増加し続けている。現在のところ、有効な薬物治療は存在しない。そこで、ASについて、シングルセルRNAシークエンス解析を行い、大動脈弁逆流症(AR)と比較することで、その特徴を捉え、治療標的を見出すこととした。シングルセルRNA解析から、AS症例ではAR症例と比べ、スカベンジャー機能を有するレジデントマクロファージの割合が減少する一方、単球が多く浸潤していることが分かった。またNK細胞の集積を認めた。病理学的所見からは、AS症例の石灰化周囲にマクロファージの集積が見られ、マクロファージ機能への介入は、大動脈弁狭窄症に対する今後の新たな治療ターゲットになりうる。また、CHIPによる層別化が有効である可能性が示唆された。 | |||
片桐 美香子 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学大学院医学系研究科 循環器内科 | シングルセルマルチオミックス解析による心臓サルコイドーシスの新規バイオマーカーの同定 | 100 |
サルコイドーシスは、原因不明の全身性肉芽腫性疾患であり、詳細な病態機序は不明である。本研究の目的は、心臓サルコイドーシス患者の空間的解析で観察される組織学的特徴と、末梢血液中単核細胞 (PBMC) のシングルセル解析で見出した免疫細胞の変化から、新規バイオマーカー・治療ターゲットを検索することである。 心臓組織の空間的解析では、肉芽腫にはマクロファージと活性化したリンパ球が増加していることが観察され、様々なサイトカインを発現していることを明らかにした。PBMCのscRNA-seq解析では、活性化CD8 T細胞が増加していた。血漿プロテオーム解析では、免疫細胞の活性化や遊走に関連する因子の上昇と治療による低下を認め、組織中のサイトカインを反映している可能性が考えられた。今回の結果から、これまで注目されていなかった細胞集団の疾患への関与が明らかとなり、ステロイド抵抗性症例に対する新規治療法の確立へと繋げていきたい。 | |||
小林 洋輝 アブストラクト 研究報告書 | 日本大学医学部 内科学系 腎臓高血圧内分泌内科学分野 | 新規BMP拮抗分子に着目した糖尿病における心筋細胞の線維化機構の解明 | 100 |
本研究では、腎保護作用を持つBMP-7の拮抗分子であるNBL1が、糖尿病性心筋症における線維化進展にも関与する可能性を検討した。NBL1ノックアウト(KO)マウスを用い、ストレプトゾトシンで糖尿病性心筋症モデルを作成したところ、コントロール群と比較して、糖尿病群の野生型(WT)マウスでは、血中NBL1濃度および心臓組織におけるNBL1 mRNA発現が有意に増加しました。また、糖尿病群のWTマウスでは線維化関連遺伝子(Fibronectin、Collagen IV、CTGF)の発現が増加し、NBL1 KOマウスではその発現が抑制されました。これらの結果は、NBL1が糖尿病性心筋症の線維化進展を促進する因子であることを示唆しています。 | |||
蕭 詠庭 アブストラクト 研究報告書 | 国立循環器病研究センター研究所 心血管老化制御部 | 選択的老化細胞除去による動脈硬化治療法の開発 | 100 |
加齢に伴い全身の臓器で老化細胞が蓄積する。本研究は、選択的老化細胞除去(セノリシス)による心房細動リバース法の開発にある。ハーブ成分等、食材として日々摂取できるものからセノリシス効果を有する物質を探索する。選択的老化細胞除去システムとして特に補体経路に着目し、心房細動モデルマウス、各種細胞実験、バイオインフォマティクスを用いた包括的検討を行う。昨今、我々は自発的に心房細動を発症するマウスモデルの作製に成功しました(特許出願準備中)。この心房細動マウス(Tgマウス)は、ストレスや治療なしで、早ければ生後5週齢で心房細動の症状が発見した。さらに、老化内皮細胞(HUVEC)で低濃度のCD59中和抗体をHUVECに投与すると若いHUVECには影響がないものの、老化HUVECが死滅することもわかった。また、老化HUVECが死滅関連の補体経路による細胞障害が生じにくい機序の解明もわかった。 | |||
谷 英典 アブストラクト 研究報告書 | 慶應義塾大学 循環器内科 心臓病未来治療学共同研究講座 | ヒトiPS三次元心組織を用いた心不全の新規病態、治療法の開発 | 100 |
本研究では、高脂肪酸およびNOS阻害剤添加培地下でHFpEFモデルヒト心臓組織を作製し、心不全の新規病態メカニズムの解明や治療薬の探索に応用することを目的とした。 HFpEFモデルにおいて拡張期持続時間/収縮期持続時間の比が優位に増加していることを確認し、拡張機能障害が誘発されることが示唆された。次に、免疫染色によりHFpEFモデルの組織では線維化が誘導されていることを明らかにした。さらに、タイチンのアイソフォームが柔らかなN2BA型より硬いN2B型が優位になり、コラーゲンが3型よりも1型優位になることで、拡張機能障害の原因として組織の硬化が関与していることが示唆された。 本研究は、in vitroにおける心臓組織の拡張機能不全の再現性研究のスタンダードとなりうるものであり、今後の新たな治療法の開発に応用されることが期待される。 | |||
中尾 元基 アブストラクト 研究報告書 | 北海道大学大学院医学研究院 循環病態内科学 | 光遺伝学を用いた効果的な心房細動光除細法の開発 | 100 |
光遺伝学を用いた心房細動の光除細動効率を向上させるため、チャネルロドプシン2(ChR2)を心房筋に発現させたトランスジェニックマウスを対象に研究を行った。活動電位の各時相での光刺激が活動電位持続時間(APD)および有効不応期(ERP)に与える影響を検証し、再分極相での光刺激がAPDとERPを最も延長し、光除細動効果を最大化することを明らかにした。さらに、再分極相で短時間パルス光を用いることで効率的に心房細動を停止できることを確認した。この結果から、活動電位再分極相での光刺激が光除細動の有用性を高める重要な要因であることが示唆された。 | |||
花田 保之 アブストラクト 研究報告書 | 宮崎大学医学部 機能制御学講座 血管動態生化学教室 | 血管周囲基質の動的な力学特性に着目した血管新生制御機構の解明 | 100 |
血管新生は、既存の血管から新しい血管が出芽して伸長し、新しい血管網を形成する現象であり、正常な組織形成や、虚血、腫瘍などの病態と深く関わる。血管新生における血管伸長と内腔形成は、ほぼ同時期に起こるが、その統合制御機構は不明である。本研究は、独自の微小流体デバイスによる血管新生再現実験系を用いて、新生血管の内側(血圧)と外側(血管周囲基質の硬さ)の力学的バランスに着目し、血管伸長と内腔形成の統合制御機構を明らかにする。内腔形成後の血液流入に伴う過剰な新生血管の拡張は、血管伸長を抑制するが、一方で生体内では、ペリサイトが血管基底膜の形成を促進することで、血管周囲を物理的に補強し、過剰な血管拡張を抑えることで血管伸長を促進することがわかった。人工的な血管周囲基質の硬化は、この促進機構を模倣する。本研究は、血管新生の新たな生体力学的制御機構を明らかにするとともに、新規の制御技術の可能性を示唆する。 | |||
平井 健太 アブストラクト 研究報告書 | 岡山大学病院 小児科 | 川崎病の冠動脈微小環境における時空間トランスクリプトミクスによる創薬基盤研究 | 100 |
川崎病は、最初の報告から50年以上経過した現在でも血管炎が起こる原因は不明である。治療法として免疫グロブリン療法(IVIG)があるが、川崎病患者の24.4%はIVIG治療抵抗性であり、炎症が遷延すると巨大冠動脈瘤を生じ、冠動脈破裂や心筋梗塞により若年突然死のリスクとなる。本研究では、川崎病の病態解明と新規治療薬開発のために、川崎病モデルマウスの心臓由来細胞を用いて、IVIGの有無による経時的なsingle cell RNA-seqを行った。冠動脈炎の惹起により、CD177陽性の活性化好中球の増加を認めた。エンリッチメント解析を実施したところ、IVIGにより細胞死や血小板活性化の関連遺伝子は抑制されていたが、NF-κB経路や好中球の血管内皮へのmigrationに関連する遺伝子群は抑制されていなかった。我々は本研究で得られたデータを活用することで、川崎病に最適化したAI薬効予測モデル(GDTrans-KD)を独自に構築し、新規治療薬候補の検証を進めている。 | |||
三木 健嗣 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学ヒューマン・メタバース疾患研究拠点 オルガノイド生命医科学 | 小児心臓組織検体の空間オミクス解析と疾患 iPS 細胞を用いた拡張型心筋症の病態解明 | 100 |
拡張型心筋症(DCM)は、左室の収縮不全と左室内腔の拡張を特徴とする心筋症であり、特に小児DCMは小児心筋疾患で最も多く、診断後1年で約26%、診断後10年で38%が死亡、あるいは心臓移植到達と極めて予後不良である。申請者が所属する研究室ではこれまでの小児心臓移植の実績から複数の小児DCM患者の心臓組織検体を有している。本研究では小児DCM患者の心臓組織検体の空間オミクス解析、シングル核解析及び疾患ヒトiPS細胞由来成熟化心筋組織を用いたアプローチで拡張型心筋症の病態解明と治療法の探索を実施する。 | |||
吉岡 望 アブストラクト 研究報告書 | 新潟大学医歯学総合研究科 脳機能形態学分野 | 心筋細胞におけるタンパク質凝集体の構成分子と形成機序の解明 | 100 |
Dystonin(DST)は、細胞構造の維持や細胞接着に寄与する細胞骨格連結タンパク質であり、神経型のDST-a、筋肉型のDST-b、皮膚型のDST-eという3種類のアイソフォームが存在する。筋肉型のDst-bアイソフォームに特異的な遺伝子変異マウスでは、p62やユビキチンを含むタンパク質凝集体の形成を伴うミオパチーや心筋症を発症する。本研究では、Dst-b変異マウスの心筋細胞に形成される蛋白質凝集体の形成機序と構成分子の検証した結果、異常タンパク質のリフォールディングに関わる小胞体ストレス応答や、分解処理に関わるオートファジーの変動を明らかにした。さらに心筋組織からタンパク質凝集体を含む核分画の精製法を確立した。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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池田 昌隆 アブストラクト 研究報告書 | 九州大学病院 循環器内科 | 心血管疾患におけるフェロトーシスを基軸とした病態解明と治療法の開発 | 100 |
フェロトーシスは鉄依存性に生じる脂質過酸化により誘導され、鉄キレート剤、脂質親和性抗酸化剤、GPX4により抑制されることを特徴とする細胞死である。本研究は、ドキソルビシン(DOX)心筋症と心筋虚血再灌流傷害(I/R)におけるフェロトーシスを基軸とした病態解明と治療法の開発を目的とした。DOX心筋症では、1) ミトコンドリアを端緒としたフェロトーシスが最も優位な心筋細胞傷害の基盤であり、2) mtDNAに集積したDOXとヘム合成障害により生じた鉄過剰が協調してフェロトーシスを誘導すること、3) 5-アミノレブリン酸がヘム合成を促進し、過剰鉄、脂質過酸化およびフェロトーシスを抑制すること、を明らかにした。I/R傷害では、ヘム分解を通じて生じた小胞体の鉄過剰に基づくフェロトーシスが主たる傷害基盤であり、鉄キレート剤デフェラシロクスが心筋虚血再灌流傷害に対する新規治療戦略となることを明らかにした。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
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(留学先) | |||
根本 寛子 | 横浜市立大学大学院医学研究科 外科治療学 | 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の病態機序の解明 | 500 |
Sulpizio Cardiovascular Institute, University of California, San Diego, U.S.A. |