研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 区分 (*) | 助成額 (万円) |
---|---|---|---|---|
池田 匡志 アブストラクト 研究報告書 | 名古屋大学大学院医学系研究科 精神医学分野 | 統合失調症感受性遺伝子変異の同定:common/rare variantの融合解析 | 1 | 100 |
統合失調症の発症遺伝要因は、一塩基多型を始めとするcommon variantの寄与が大きいが、コピー数変異(CNV)などrareなvariantも一部関係する。本研究では、common variantのリスクの総和であるpolygenic risk score (PRS)と、CNV(特にサイズの大きいCNV)を考慮した解析を行うことで、SCZの候補遺伝子同定を目指した。具体的には、日本人SCZ患者genotypingデータを用いてPRSを算出、CNVをcallした上で、PRSが低いサンプルにおけるCNVに着目した。これはrare variantが寄与する蓋然性が高いため、それらサンプルの複数のCNVが新たな疾患発症の候補遺伝子として挙げられた。 | ||||
小池 進介 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学大学院総合文化研究科 進化認知科学研究センター | 脳画像に基づくサブタイプ分類と判別可能な機械学習器作成 | 2 | 100 |
磁気共鳴画像(MRI)を用いた精神疾患研究は30年以上経過したが、いまだ臨床応用には至っていない。本研究は、MRI解析技術の限界(疾患横断比較やサブタイプ分類の不足、機種間差、年齢・性別の影響)を克服し、機械学習解析を行うことを目的とした。統合失調症151人、大うつ病性障害445人、自閉スペクトラム症154人、健常対照599人の脳MRIデータを対象とした。MRIデータは統一した前処理を行い、Traveling Subject法で機種間差補正を実施。さらに年齢・性別の非線形効果を除去した脳特徴量を作成した。サブタイプ分類では、統合失調症群では2つ、大うつ病性障害群では3つのサブタイプが特定された。特に統合失調症サブタイプ2とうつ病サブタイプ2は類似した脳構造特徴を示した。一方、自閉スペクトラム症群では明確なサブタイプ分類は困難であった。本研究の成果は、生物学的分類に基づく鑑別診断補助の開発や治療技法の進展に寄与する可能性を示唆している。 | ||||
高橋 努 アブストラクト 研究報告書 | 富山大学学術研究部医学系 神経精神医学講座 | 早期精神症における脳回形成異常の機能的および臨床的意義の解明 | 1 | 100 |
ヒト脳の粗大な脳溝脳回パターンは信頼性の高い早期神経発達マーカーと考えられ、早期精神症では広範な脳領域における局所脳回指数上昇やヘシュル回および島回における脳溝脳回パターンの偏倚が報告される。しかし、これらの所見の機能的意義や影響要因、疾患特異性は十分には検討されていない。本研究の結果から、早期精神症にみられる粗大な脳溝脳回パターンの偏倚が白質線維連絡の異常と関連することが示唆された。一方、持続長ミスマッチ陰性電位(dMMN)発生源とされるヘシュル回の脳回パターンとdMMN振幅との関連は見出されなかった。島回の脳溝脳回パターンに関して、気分症群においても早期精神症と類似の所見が得られ、疾患特異性に関してはさらなる検討が必要と考えられた。最後に、出生季節が胎生期におけるヒト脳溝脳回形成に影響することが示唆された。 | ||||
平野 羊嗣 アブストラクト 研究報告書 | 宮崎大学医学部 臨床神経科学講座 精神医学分野 | AMPA受容体標識プローブと脳磁図を用いた統合失調症のマルチモーダル研究 | 1 | 100 |
本多施設共同研究では、新規開発されたAMPA受容体を標識するPET用トレーサーを用いて、AMPA受容体の密度を計測するとともに、脳波を用いて統合失調症のニューラルオシレーション異常の責任領域を特定し、最終的には両者を統合解析し、(AMPA受容体とニューラルオシレーション異常を主体とした)バイオタイプを同定することを目指した。その結果、従来から統合失調症の脳機能異常の部位として指摘されてきた、ACCや前頭皮質、上側頭葉といった領域において、AMPA受容体の密度異常が同定された。さらに、それらのAMPA受容体密度と相関するニューラルオシレーション異常パターンを示すバイオタイプ(生物学的なサブタイプ)が明らかとなった。今後は本結果をもとに、多施設研究を行い、大きなデータサンプルを用いて検証を進め、最終的にはAMPA受容体とニューラルオシレーション異常を有するバイオタイプに対する、早期診断や早期介入、新規治療法開発を目指す。 | ||||
文東 美紀 アブストラクト 研究報告書 | 熊本大学大学院生命科学研究部 分子脳科学講座 | 統合失調症患者死後脳のさまざまな細胞種画分からのシングルセル遺伝子発現解析 | 1 | 100 |
これまで、精神疾患患者死後脳を使用した遺伝子発現解析などのオミックス解析に関する報告が多く行われているが、脳を構成する細胞種の複雑性を考慮されていないものが多い。本研究では、統合失調症患者、健常者死後脳 (n=10ずつ)から神経細胞、オリゴデンドロサイト、活性型マイクログリア、アストロサイト、その他のグリア細胞由来の細胞種由来の細胞核を分画し、100 個ずつの細胞核を使用してトランスクリプトーム解析を行った。それぞれの細胞群で患者-健常者で発現の変化を示す遺伝子の同定を行ったのちパスウェイ解析を行った結果、神経細胞画分において、神経伝達物質の放出に関与するreactome、またマイクログリア画分において自然免疫といったreactomeに、患者-健常者で発現差がある遺伝子の蓄積が検出され、これらの遺伝子発現変動が疾患の病因に関与する可能性が示された。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 区分 (*) | 助成額 (万円) |
---|---|---|---|---|
有賀 純 アブストラクト 研究報告書 | 長崎大学医歯薬学総合研究科 医科薬理学 | LRR膜タンパク質によるモノアミン神経系制御と気分障害・強迫スペクトラム症の病態 | 1 | 100 |
脳神経系に発現するロイシンリッチリピート(Leucine-Rich Repeat, LRR)を 含む膜貫通タンパク質は神経突起の伸展制御、シナプス形成・機能維持において重要な役割を持つ。申請者らは6種類のLRR膜タンパク質よりなるSlitrk (Slit and Ntrk-like)ファミリータンパク質を同定・命名し、発現・機能解析を行った。このうち、Slitrk1欠損, Slitrk2欠損, Slitrk5欠損の3系統のマウスにおいて、モノアミン代謝と行動異常が起きることを見いだした。本研究では強迫スペクトラム症もしくは気分障害に関連するLRR 膜タンパク質遺伝子がどのような機序でモノアミン性神経系の発生・発達を制御するのか、不安様行動異常・うつ様行動異常はモノアミン性神経伝達を標的とする治療薬によりどのような影響をうけるのかを検討した。 | ||||
竹内 雄一 アブストラクト 研究報告書 | 北海道大学大学院薬学研究院 医療薬学部門 | 経頭蓋脳深部刺激によるうつ病制御法の開発 | 2 | 100 |
うつ病はしばしば薬剤抵抗性であるため、非薬剤性の症状制御法の開発が望まれている。最近筆者らは、閉ループ大脳辺縁系刺激によるうつ病様症状制御法の開発に成功した。しかしながら当該法は脳深部への電極刺入を必要とするため、その侵襲性が課題であった。そこで本研究は、大脳辺縁系非侵襲的刺激によるうつ病制御を目指し、脳深部における超音波遺伝学的脳刺激法を確立することを目的とした。超音波遺伝学素子として、バクテリア由来の機械受容チャネルを用いた。当該チャネルを神経細胞に発現するウイルスベクターを精製し、げっ歯類の内側中隔核に接種した。通常飼育後、内側中隔核を標的に経頭蓋集束超音波照射を行い、神経活動の変調を評価した。その結果、機械受容チャネル発現群において、対照群に比して、より高効率の神経活動変調が観察された。本成果の大脳辺縁系への応用により、薬剤抵抗性うつ病を非侵襲的脳刺激で制御する技術を創出できる。 | ||||
橋本 謙二 アブストラクト 研究報告書 | 千葉大学社会精神保健教育研究センター 病態解析研究部門 | 腸-脳相関に基づく合成麻薬MDMAのレジリエンスに関する研究 | 2 | 100 |
覚せい剤の誘導体である合成麻薬MDMAは、世界中の若者によって乱用されている薬物である。MDMAは覚せい剤とは異なり、ドパミン神経系への作用が弱く、主にセロトニン神経系とオキシトシン系に作用する。近年、MDMAを精神療法と組み合わせることで、PTSD患者の症状を有意に改善することが報告され、注目を集めている。これまで、マウスの社会的敗北ストレスモデルにおいて、MDMAを投与すると、うつ様行動を示さないこと、さらに腸-脳相関がその効果に寄与している可能性を報告した(。迷走神経は腸-脳相関に重要な役割を果たしているため、本研究ではマウスの慢性拘束ストレスモデルを用いて、MDMAのレジリエンス効果における迷走神経切断の影響を調べることを目的とした。 MDMAの投与は、慢性拘束ストレスに対してレジリエンス効果を示した。一方、横隔膜下で迷走神経を切断したマウスでは、MDMAのレジリエンス亢進作用が見られなかった。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 区分 (*) | 助成額 (万円) |
---|---|---|---|---|
長井 篤 アブストラクト 研究報告書 | 島根大学医学部 内科学講座 内科学第三 脳神経内科 | 尿中エクソソームタンパク測定による認知障害早期診断法開発 | 2 | 100 |
尿中エクソソームタンパク測定による認知障害のバイオマーカー確立の基礎研究をおこなった。ヒト臨床検体を用いてエクソソーム抽出方法の確立をおこない、ELISAの測定も行えるため、順次検体を準備して測定を行って解析を行う予定である。ヒト検体を用いた尿エクソソーム解析は行われておらず、初めての試みであるが、今後実用化に向けて測定系を確立していくことで、実臨床での測定や臨床応用が可能と考える。一方、脳ドック検体で得られた唾液中の口腔内細菌叢分析を行い、脳ドックで得られた無症候性脳病変と口腔内細菌叢に関連がないか検討した。脳ドック受診者において無症候性脳病変と唾液中のFusobacterium属との関連が初めて確認された。脳動脈硬化進展や脳小血管病による脳機能低下などに、口腔内細菌叢が関与する可能性があり、口腔内の衛生管理により脳梗塞の発症率の低減も期待される。今後のさらなる検討が必要である。 | ||||
森 康治 アブストラクト 研究報告書 | 大阪大学大学院医学系研究科 精神医学 | 前頭側頭型認知症iPS神経細胞を活用したリピート翻訳制御機構の解析 | 1 | 100 |
前頭側頭型認知症(FTD)は常同行動、脱抑制的な性格変化などを呈する認知症である。C9orf72リピート伸長変異例ではGGGGCC(G4C2)が数百回以上に伸長しており、これによりFTDやその類縁疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)が引き起こされる(C9orf72 FTD/ALS)。G4C2リピートRNAはRepat associated non-AUG(RAN)翻訳により全ての翻訳フレームで翻訳される。本研究では培養細胞モデルなどにおいて、翻訳開始因子であるeIF5が開始コドン認識の正確性を緩め、non-AUG翻訳を促進することを明らかにした。続いて、C9orf72-FTD/ALS患者由来iPS細胞を神経細胞に分化させ、poly-GA DPRの検出を試みたが、明らかなDPR由来のシグナルを検出するに至らなかった。検出感度の向上による内因性DPRでの検証については今後の検討課題である。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 区分 (*) | 助成額 (万円) |
---|---|---|---|---|
田渕 克彦 アブストラクト 研究報告書 | 信州大学学術研究院医学系 分子細胞生理学教室 | 自閉症の治療標的の探索を目指した社会行動異常責任神経回路の同定 | 1 | 100 |
本研究では、自閉症の社会行動異常に関連する責任神経回路を特定することを目的に、遺伝的要因および環境要因に基づく複数の自閉症モデル(PNEマウス、VPAマウス、IQSEC2 KOマウス、Nlgn3 R451C変異マウス)を用いて解析を行った。AIを活用したnon-biasな自動行動解析システムの構築も行い、PNEモデルマウスで、自閉症コア症状である社会行動異常も確認した。さらに、全てのモデルで成熟海馬ニューロン新生の低下が共通して認められ、フルオキセチン投与により社会行動異常とニューロン新生の改善が確認された。この結果は、海馬のニューロン新生が自閉症の病態における鍵となることを示唆するとともに、フルオキセチンが広範な自閉症治療薬としての可能性を持つことを示した。加えて、AIによる行動解析技術の開発はヒト患者への応用にも展望を開き、今後の治療戦略に貢献する成果である。 | ||||
土屋 賢治 アブストラクト 研究報告書 | 浜松医科大学子どものこころの発達研究センター | 視線データの臨床的位置づけの確定と神経発達症臨床への展開 | 2 | 100 |
本研究は,742名の6歳児に対するGazefinderを用いた視線の自動計測を行い,得られた視線データと,NDDsの表現型や発達特性を反映する臨床変数(ASD症症状,ADHD症状,発達および機能水準,それぞれ6,9歳で計測する)との関連を探索的に検討した。「顔への注視」課題から得られる指標の一部は,ASD症状,ADHD症状と関連し,3年後の症状とも関連した。しかし,それ以外の課題から得られる指標は,一貫した関連を示さなかった。「顔への注視」課題,「ヒトに対する選好的注視」課題,「Biological motionに対する注視」課題から得られる指標の一部は,発達・機能水準とよく関連し,3年後の発達・機能水準とも関連した。 Gazefinderによって得られる視線データを,NDDs症状およびそれに関連する機能を客観的に計測する系として活用できる可能性が示唆された。 | ||||
中島 光子 アブストラクト 研究報告書 | 浜松医科大学 医化学 | 翻訳開始因子障害による神経発達症の病態解明 | 1 | 100 |
本研究では、4例の小児神経発達症患者において新規原因遺伝子Xの病的バリアントを同定した。これらのバリアントに対し、in silico予測ツールを用いた構造予測、培養細胞を用いたタンパク質機能評価、ショウジョウバエ視神経を用いた表現型の観察を行った。異なる4症例において4つのミスセンスバリアントが同定され、構造予測では4つのうち2変異体はタンパク質構造の破壊が起こることが予想された。また、1変異体はRNAスプライシングに変化をもたらすことが予想され、in vitoroでの解析によって。いずれの変異型タンパク質も発現の安定性は保たれていたが、ショウジョウバエを用いた解析では、同定されたすべての変異体が機能喪失型バリアントであることが示唆された。本研究は神経発達症の病態解明と将来的な治療法開発などにつながる可能性が期待される。 | ||||
山室 和彦 アブストラクト 研究報告書 | 奈良県立医科大学 精神医学講座 | 自閉スペクトラム症におけるメトフォルミンの先進的研究 | 2 | 100 |
自閉スペクトラム症は社会性相互交流の障害や、常同行動、興味の限局などを示す疾患であり、遺伝要因や環境要因、また双方の要因が交絡することで生じることが示されており、複雑な要因が病態の解明を困難にしている。そのため、自閉スペクトラム症の有効な治療法の開発が喫緊の課題であり、AMPK activatorであるメトフォルミンが注目されている。自閉スペクトラム症モデルであるFMR1やBTBRマウスにおいてmTORを抑制し、社会性が改善されることが報告されており、その臨床応用が期待されているため、本研究課題ではマウスとヒトの双方向性トランスレーション研究から自閉スペクトラム症に対するメトフォルミンの作用機序を解明を目的とし、本研究課題が将来的にメトフォルミンの臨床研究に向けた一助となることが期待される。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 区分 (*) | 助成額 (万円) |
---|---|---|---|---|
佐々木 努 アブストラクト 研究報告書 | 京都大学大学院農学研究科 食品生物科学専攻 栄養化学分野 | 飲酒を調節する新奇生体機序に作用するアルコール依存症治療薬の開発 | 2 | 100 |
過剰飲酒は世界第9位の疾病負荷である。過剰飲酒対策として上市されている薬剤の効果は限定的で副作用を伴い、アルコール依存症に対する効果的な介入法がない。本研究では、申請者が発見した飲酒欲求を調節する新奇機序(FGF21-オキシトシン-VTAドーパミン系)に対して、作用する低分子化合物(FGF21誘導性の低分子化合物)を同定し、の最適化を進め、アルコール依存症に対する治療薬開発を目指した。そのために、マウス細胞での探索を進め、Hit化合物を5つ同定した。Lead化合物を得るために必要な構造―活性相関/化合物展開を進めるために、評価系のヒト化に取り組んだ。今後、化合物展開をAMED-BINDSの支援を受けて進め、自身が確立したアルコール依存症モデルマウスで、性能を評価ウする予定である。既存薬とは異なる作用点への創薬により、有効な介入手段の一つとなることが期待される。 | ||||
田口 明子 | 国立長寿医療研究センター研究所 統合神経科学研究部 | グリアインスリンシグナルを介した認知機能調節機構の解明 | 1 | 100 |
野田 隆政 アブストラクト 研究報告書 | 国立精神・神経医療研究センター病院 精神診療部 | COVID-19罹患後症状に対するクロミプラミンの有効性の検討 | 2 | 100 |
新型コロナウイルス(COVID-19)罹患後症状では、倦怠感や認知機能障害により日常生活を取り戻せず苦しむ患者が多く、治療法の開発は喫緊の課題である。クロミプラミンは2021年にCOVID-19のACE2受容体の内在化を阻害する機序が発見され、この知見をもとに罹患後症状を有していた6名の外来患者に対しクロミプラミンを投与し劇的に改善したという経験を得た。COVID-19罹患後症状を有する対象者にクロミプラミンを低用量投与し、安全性や倦怠感、認知機能、身体機能などの情報収集を目的としたオープントライアル試験を計画した。プロトコルを作成、特定臨床研究の承認を得た後に各部門と連携調整を行い2024年9月よりリクルートを開始した。本研究の参加者は現在7例である。継続中が大半で考察はできないが、予備的検討や本試験の一部データからは効果が大いに期待できるため、薬事承認を目標として研究を継続していく。 | ||||
浜田 俊幸 アブストラクト 研究報告書 | 国際医療福祉大学薬学部 薬学科・年齢軸生命機能解析学分野 | 覚醒剤による脳神経変化の時期を毛1本から検出する研究 | 1 | 100 |
覚醒剤を毎日一定時刻に投与すると、投与時刻前から行動量が増加する予知行動が形成される。本研究によりMAP投与により予知行動が形成されるのは投与後3日以内であり、0.2% MAP濃度(0.5ml投与)が投与濃度の上限であることが明らかになった。MAP投与後、3時間後に急激な行動量増加が誘発され、活動量持続時間が4時間ほどであることからMAPの有効血中半減期は数時間であることが考えられた。予知行動形成後に生体に生じる生体変化としてMAPによる体重減少効果がMAP投与後2週間で消失することを明らかにした。この時期にMAP投与による死亡率が雄のみ高かった。さらに1か月MAP投与と続けると、MAP投与後、約20分で異常行動が誘発されるが活動量増加を伴わないため、活動量に関与していない脳部位の変化が関与していると考えられる。以上予知行動形成時以降に出現する生体機能変化に関与する脳部位は、予知行動形成に関与していないと考えられた。 | ||||
山下 親正 アブストラクト 研究報告書 | 東京理科大学薬学部 生命創薬科学科・DDS・製剤設計学 | 神経回路を活かしたNose-to-Brainシステムを用いた進行性核上性麻痺の治療薬の開発 | 2 | 100 |
進行性核上性麻痺(PSP)は、タウ蛋白が異常リン酸化を受けて脳幹へ蓄積し、細胞内で神経変性を惹起して、タウ凝集体が神経細胞間を伝播することで病変が進行し発症する。PSPの中で、対症療法がなく脳幹の神経変性により眼球運動障害を伴う垂直性核上性注視麻痺に対する治療薬の開発は急務である。本研究では、タウ蛋白の異常リン酸化を抑えるGlucagon-like peptide-1 (GLP-1)と、神経回路に沿って神経細胞を乗り継いで脳幹や眼球へ効率良くGLP-1を送達できる糖鎖修飾Nose-to-Brainシステムを用いて、PSPの治療薬としての可能性を検証した。マウスに糖鎖修飾PAS-CPP-GLP-1誘導体を経鼻投与してその脳内分布を評価した結果、PSPにおける脳幹の主な神経変性部位や大脳基底核への局在が観察され、垂直性核上性注視麻痺の治療薬の開発に繋がる知見が得られた。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 区分 (*) | 助成額 (万円) |
---|---|---|---|---|
大瀬戸 恒志 アブストラクト 研究報告書 | 東北大学医学系研究科 分子疫学分野 | 周産期うつ病の病型分類と、遺伝的構造・背景因子・予後の解明 | 2 | 100 |
抑うつ症状の経時的な軌跡に基づいて周産期うつ病 (PD)を分類することで、より均質なサブタイプを構築し、それぞれの遺伝的構造を明らかにすることを目指した。12,338名の女性を対象に、周産期に計4回抑うつ症状を評価し、その軌跡に応じて妊娠期PD、産後早期PD、産後後期PD、慢性PDの4つのサブタイプに分類した。各サブタイプに対してゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施したところ、5つの異なる感受性遺伝子座が同定された。さらに、大うつ病(MDD)および月経前症候群 (PMS) の多遺伝子リスクスコア (PRS) とPDのサブタイプとの関連を検討したところ、MDDのPRSは妊娠期、産後早期、および慢性PDと有意に関連し、PMSのPRSは産後後期PDと関連していた。本研究によりPDは抑うつ症状の軌跡によって異質なサブタイプを持ち、それぞれに特異的な遺伝的構造を持つことが示された。 | ||||
河合 洋幸 アブストラクト 研究報告書 | 大阪公立大学大学院医学研究科 脳神経機能形態学 | 抗うつ・抗不安作用をもたらす新たなセロトニン神経基盤の解明と新薬開発への応用 | 1 | 100 |
本研究では、光遺伝学的手法を用いた縫線核セロトニン神経の活動調節や、薬理学的手法及び免疫組織化学を用いた関連分子の情動行動における機能の解析を行い、マウス脳における情動制御機構を解明した。本研究成果は、既存薬とは異なる機序の、新規精神疾患治療薬の開発に役立つと考えられる。 | ||||
田宗 秀隆 アブストラクト 研究報告書 | 順天堂大学大学院医学研究科 精神・行動科学 | ヒトiPS細胞由来神経細胞のミトコンドリアに着目した双極性障害の創薬基盤構築 | 1 | 100 |
ミトコンドリア変異のモザイク状態と神経機能の関連を解明し、ミトコンドリアに着目した創薬基盤の構築を目的とする。本研究期間では、ヒトiPS細胞由来神経細胞の電気生理学的解析系の確立を行った。 本研究助成のおかげで、ヒトiPS細胞培養系を持っていなかった本グループにおいて、新規に培養系を立ち上げることができた。また、これまで経験のなかった電気生理学的実験についても、多電極アレイ(MEA)を用いて種々の検討を行い、実験誤差を少なくするため、培養条件等の最適化を行うことができた。また、薬理学的なポジティブコントロールで発火頻度が変化することが確認できた。今後は、特に興味のある遺伝子変異を持つ患者由来の神経細胞株に同様の手法を適応し、薬剤スクリーニングを行っていく。 発展的には、疾患横断的に診断法・治療法の開発を進め、従来の臨床症状による疾患分類とは異なる新たな類型を提唱し、個別化医療を提案したい。 | ||||
永井 裕崇 アブストラクト 研究報告書 | 神戸大学大学院医学研究科 薬理学分野 | 慢性ストレスによるシナプス代謝シフトの実態と機序、意義の解明 | 1 | 100 |
社会や環境によるストレスはうつ病のリスクを高め、脳代謝変化を生じる。本研究では、マウスを用いて慢性ストレスが前頭前皮質におけるシナプス特異的な代謝変化を引き起こす実態とその意義を解明することを目的とした。糖代謝の正常化を目的とした糖輸送体のノックダウンがミクログリア活性化に与える影響をRNAseq解析で検討し、ミクログリアの遺伝子発現変化の一部が神経代謝依存であることを発見した。さらに、質量分析イメージングにより脳領域選択的な代謝変化を見出した。領域間の類似性に基づき海馬―前頭前皮質回路特異的に糖輸送体やグルココルチコイド受容体を発現抑制することで、ストレスによる認知機能障害を抑制できること、すなわち同回路における代謝変容がストレスによる認知機能障害を引き起こすことを見出した。今後、代謝変化を担う機序を焦点とした研究が発展することにより、うつ病の病態解明や層別化医療への応用が期待される。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 区分 (*) | 助成額 (万円) |
---|---|---|---|---|
藤川 理沙子 アブストラクト 研究報告書 | 九州大学薬学研究院 薬理学分野 | 新ミクログリア細胞群の機能を解明しアルツハイマー病治療を目指す | 1 | 100 |
高齢化の進展とともに認知症患者数が増加し、社会問題となっている。認知症の中でもアルツハイマー型認知症 (AD) は50%以上と最多を占める。Amyloid beta (Aβ) ワクチンをはじめとする多くのADの治療候補薬は、重篤な副作用の発現や有効性が確認できないことを理由に開発中止となり、新たな治療標的の探索が重要な課題である。本研究では、ADで顕著に増加する特異的な遺伝子プロファイルを持つ細胞集団『CD11c陽性ミクログリアサブセット』に着目した検討を実施した。結果、CD11c陽性ミクログリアがAD発症抑制に関与すると考えられるデータが得られた。CD11c陽性ミクログリアを新たなAD治療ターゲットとして提案でき、多くの患者の助けになる可能性がある。 | ||||
水谷 真志 アブストラクト 研究報告書 | 東京大学医学部附属病院 精神神経科 | 近接ライゲーションアッセイ法を用いたレビー小体病のモノアミン神経系変性の病態解明 | 1 | 100 |
近接ライゲーションアッセイ法(PLA法)は、タンパク質間相互作用や特定のタンパク質修飾を高感度に検出できる手法として注目されている。本研究では、国立精神・神経医療研究センターに保管されているレビー小体病患者死後脊髄・アルツハイマー病患者死後脳を用いて、αシヌクレイン及びリン酸化タウに対してPLA法を行い、既に報告されているαシヌクレインに対するPLA法による検出に成功した。検出されたパターンは、既報のパターンとも矛盾しないものだった。また、さらに世界的にも成功の報告が限定的であるリン酸化タウに対するPLA法による検出に成功した。 αシヌクレインによるPLA法が確立したため、今後はモノアミン神経系の線維密度とαシヌクレインオリゴマー密度との相関関係を検討するなどして引き続き研究を継続していく。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 区分 (*) | 助成額 (万円) |
---|---|---|---|---|
中井 信裕 アブストラクト 研究報告書 | 神戸大学大学院医学研究科 生理学・細胞生物学講座 生理学分野 | 社会性感覚に関する自閉症の脳機能ネットワーク動態研究 | 2 | 100 |
自閉スペクトラム症(自閉症)は多様な症状を持ち、脳全体のネットワーク異常が関与するとされるが、社会行動中の脳活動や感覚モダリティの異常は未解明である。本研究では、社会性刺激を制御可能なVRシステムを構築し、自閉症モデルマウスの行動と脳機能ネットワークを解析した。嗅覚・触覚など多感覚刺激を提示するVR実験系により、社会的相互作用時の皮質活動を記録し、脳機能ネットワーク動態を定量化した。自閉症モデルマウスでは社会条件への嗜好性低下と特定の脳領域の異常が確認された。さらに、機械学習を用いた脳活動の解析で高精度な自閉症モデルの分類が可能となり、診断や治療への応用が期待される。 | ||||
藤田 幸 アブストラクト 研究報告書 | 島根大学医学部医学科 発生生物学 | 神経発達障害の病態メカニズム解明 | 1 | 100 |
多様な脳の機能は、神経回路によって営まれている。さまざまな原因により神経回路がダメージを受け、脳機能の低下を引き起こす。神経回路構築の過程には、いくつかのステップがある。神経幹細胞から神経細胞への分化、標的細胞へ向けた軸索の伸長、シナプス形成、過剰な軸索やシナプスの除去を経て、精密な神経回路が構築される。この過程では、それぞれのステップの進行とともに複数の遺伝子の発現が変動する。複数の遺伝子発現を制御するメカニズムの一つとして、エピジェネティックな制御機構が知られている。そこで本研究では、神経回路形成の過程で、複数の遺伝子発現を制御するメカニズムを明らかにすることを目的とした。 | ||||
宮下 聡 アブストラクト 研究報告書 | 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 病態生化学研究部 | てんかん・発達障害の手術脳検体を用いた単一細胞トランスクリプトームによる病態解明 | 1 | 100 |
片側巨脳症は、脳の片側が通常よりも巨大化する先天性の脳奇形であり、難治性のてんかん、不全片麻痺、精神・運動発達障害などの重篤な症状を示すが、疾患の病態に関わる分子・細胞メカニズムはほとんど不明である。これは、片側巨脳症が超希少疾患であり症例数が少ないことや、疾患の病態解明に最適なモデル動物が開発されていないことが原因である。本研究では、片側巨脳症の手術脳検体を用いて単一細胞遺伝子発現解析を行うことで、脳内に存在する個々の細胞の遺伝子発現を調べ上げた。またモデルマウスの開発も進んだため、今後、片側巨脳症の分子細胞病態解明や治療法開発に貢献できる成果を得た。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 区分 (*) | 助成額 (万円) |
---|---|---|---|---|
大塚 郁夫 アブストラクト 研究報告書 | 神戸大学大学院医学研究科 精神医学分野 | 網羅的ゲノム・エピゲノムデータを用いた若年自殺行動の機序解明とリスクマーカー開発 | 1 | 100 |
アジア最大の自殺者DNA試料の網羅的ゲノム・エピゲノムデータの解析を行い、①GWAS・EWASにて複数の自殺関連遺伝子領域の同定、②精神疾患からみた、非致死性自殺未遂と自殺の遺伝的近似(及び統合失調症・双極症との遺伝的共有度の差異)、③若年自殺者EWASデータの高い自殺リスク予測能、④若年自殺者におけるエピゲノム年齢老齢化・常染色体/X染色体体細胞モザイク異常増加、⑤白人集団に比してアジア人集団で「自殺とうつ病/統合失調症との遺伝的関連」が弱い可能性、といったいずれも新規の知見を見出した。国際自殺ゲノムコンソーシアムにもアジア最大の自殺者GWASデータを提供し、年々スケールアップした人種横断的自殺行動GWASを発表している(最新の解析では43,871例の自殺行動者のGWASにて、12ヶ所のrisk lociを同定)。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 区分 (*) | 助成額 (万円) |
---|---|---|---|---|
塩飽 裕紀 アブストラクト 研究報告書 | 東京医科歯科大学大学院 精神行動医科学分野 | 疼痛性障害の自己抗体病態の解明 | 1 | 100 |
精神科領域の難治な疼痛関連疾患の一つに、原因不明の疼痛を呈する疼痛性障害があげられる。これは、一部には線維筋痛症も含まれ、従来の精神医学の概念では心理的な要因を背景に症状を形成する可能性が指摘されてきたが、臨床的にそのような心理的な病態が存在しないように見える患者も存在し、疾患病態の異種性が想定される。我々は、疼痛性障害の患者から、疼痛を引き起こす自己抗体を探索することを目的に研究を行った。また、統合失調症でも同様の探索を行い、疼痛性障害の合併があった場合、自己抗体との関連を探る方針とした。その結果、疼痛性障害患者から既知の疼痛関係自己抗体、未報告の自己抗体さらに統合失調症患者から抗NRXN1自己抗体を発見した。疼痛性障害や統合失調症で発見した自己抗体は病態を形成する除去すべき治療ターゲットになり、またそのような治療をすべきバイオマーカーにもなる可能性がある。 |
研究者名 | 所属機関 | 研究課題 | 助成額 (万円) |
---|---|---|---|
(留学先) | |||
佐竹 祐人 | 大阪大学大学院医学系研究科 精神医学 | 日英コホートを用いた老年期精神病性障害における神経病理と心理社会的要因の影響の特定 | 500 |
Division of Psychiatry Faculty of Brain Sciences University College London, U.K. | |||
谷藤 貴紀 | 神戸大学 精神医学分野 | 精神疾患で低下する社会認知機能に寄与する22q11欠失遺伝子の機械学習による同定 | 500 |
UT Health San Antonio, U.S.A. |